☆レスピーギ:組曲『鳥』他
指揮:ヒュー・ウルフ
管弦楽:セント・ポール室内管弦楽団
録音:1993年2月、9月、1994年2月
セント・ポール オードウェイ音楽劇場
デジタル・セッション
<TELDEC>4509-91729-2
ハリウッドがまだ力を誇っていた頃に製作された、古代ローマを舞台にした歴史劇が苦手だ。
エリザベス・テーラーあたりが派手派手しい衣裳で身を包み濃い目の化粧をして大仰な芝居をしれっとやっている、あの嘘臭さがどうにも苦手だ。
これが同じ派手派手しい衣裳を身に包んだ大仰な芝居でも、東映歴史劇、ならぬ東映時代劇なら無問題、大いに愉しめてしまうのは不思議だけれども。
同様に、古代ローマを舞台にしたレスピーギの交響詩『ローマの祭』も本当に苦手だ。
冒頭の下卑たファンファーレからして、ファシスト大進軍てな感じすら覚えて聴くのが辛くなる。
だから、財布紛失による中瀬財政破綻を受けた中古CD売却の際、参考までに買っておいたダニエレ・ガッティ指揮のローマ三部作のCDは迷わず売ってしまった。
ただし、レスピーギでも、ロッシーニの音楽を仕立て直したバレエ音楽『風変わりな店』とラモーらのクラヴサン曲を仕立て直した組曲『鳥』だけは、話が別。
ストラヴィンスキーのバレエ音楽『プルチネッラ』をはじめ、新古典派期に流行した過去の音楽の仕立て直し、造り直しが、僕はどうにも大好きなのである。
そういや、これって、当方の文章のあり様にもうかがえることじゃございませんか?
で、『風変わりな店』は、シャルル・デュトワとモントリオール交響楽団のCDがずいぶん前から手元にあったんだけど、『鳥』のほうは今まであいにくこれはというCDを見つけることができないでいた。
それが、先日ワルティ・クラシカルの閉店セールでこのアルバムを見つけることができた。
あな嬉し。
(って、正確にいえば、このCDの存在自体は前々から承知していたが)
セント・ポール室内管弦楽団はとびきり精度の高いオーケストラとまではいえないものの、個々のソロもなかなか達者だし、アンサンブルだってインティメートな具合にまとまっている。
それに、ヒュー・ウルフも音楽の勘所をよく押さえたシャープな音楽づくりを心掛けていて、こちらも問題ない。
カップリングは、春、東方博士の来訪、ヴィーナスの誕生の三枚の絵をイメージしたボッティチェッリの3枚の絵に、リュートのための古風な舞曲とアリアの第1&第3組曲。
ところどころ、ちょい悪親父ならぬ、ちょい鳴る音楽というか、古代ローマ風の音型やら若干派手目なオーケストレーションの芽みたいなものがうかがえるのだけれど、嫌になるほど気にはならず。
有名な第3組曲のシチリアーナなど、やっぱり親しみやすく美しいなあと思った次第。
大げさなレスピーギは苦手という人にこそお薦めしたい、悪目立ちしない一枚だ。
2015年08月04日
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