2015年08月04日

メルヴィン・タンが弾いたシューベルトの即興曲集

☆シューベルト:4つの即興曲D.899&D.935

 独奏:メルヴィン・タン(フォルテピアノ)
 録音:1987年 モールティングス・スネイプ
    デジタル・セッション
<EMI>CDC7 49102 2


 今やモダン・ピアノに戻ってしまったメルヴィン・タンの、フォルテピアノの気鋭として活躍していた頃を代表するアルバムである。
 1814年製のナンネッテ・シュトライヒャーのコピー楽器を使用して、シューベルトの二つの4つの即興曲集(計8曲)を録音したものだが、作品の持つ叙情性や歌唱性がフォルテピアノの繊細な響きでもってよく再現されている。
 技術的に見れば(聴けば)、若干気にかかる部分もなくはないのだけれど、訥弁の雄弁、訥弁の能弁というか、めくるめくテクニックのひけらかしではないからこそ、シューベルトが刻みつけた様々な心の動き、音の逡巡に気づかされたりもする。
 馴らされ矯めされたシューベルトに倦み疲れた方々にお薦めしたい一枚だ。

 できれば、タンにはハンガリーのメロディーなど、もっとシューベルトの小品をフォルテピアノで録音しておいて欲しかった。
 そのほうが、より彼の身の丈にもあっていたはずで、とても残念でならない。
posted by figarok492na at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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