☆モーツァルト:ディヴェルティメントK.563他
演奏:ラルキブデッリ
録音:1990年5月30日〜6月2日、オランダ・ハールレム・ルター派教会
デジタル・セッション
<SONY>SK46497
潤(戸坂潤)でーす!
清(三木清)でーす!
宮本顕治でございます
と、潤と清に左右の頬をぎゅっと押された顕治、すかさず
顔がブルドックみたいになっちゃった
以上、レツ獄三匹
というのは、学生時代にこっぴどく叱られた「前衛」的な余興のネタの一つ。
そういえば、じゅんでーす! 長作でーす! 三波春夫でございますの本家レツゴー三匹のほうは、巷間仲の悪さを噂されていて、確かに三人の舞台を見ていると曰く言い難い緊張感を覚えたものだった。
三人寄れば文殊の知恵、毛利元就の三本の矢とはいうものの、三人集まれば派閥ができるともいう。
なかなかこの世は生きにくく生き難い。
ことは音楽でもそう。
三重奏や三重唱。
もちろん作品によりけりだけど、俺が我がの手前勝手の自己顕治、じゃない自己顕示合戦を始めれば、それこそ目も当てられない。
逆に、三者の駆け引きが巧く決まればおもろおかしいスリリングさを味わえるし、さらに三者の調和がぴたりととれれば、そはまさに天にも昇る心持ち!
そんな三重奏や三重唱の魅力を生み出し尽くしたのが、誰あろうヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトだった。
そして、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの弦楽三重奏のために作曲されたディヴェルティメントK.563など、まさしくモーツァルトが作曲したトリオ芸の極みの一つとでも呼ぶことができるのではないか。
ヴァイオリンヴェラ・ベス、ヴィオラのユルゲン・クスマウル、チェロのアネル・ビルスマの三人は、ピリオド楽器の清新で繊細な音色を活かしつつ、個々の絶妙な押し引き加減とインティメートでバランスのよいアンサンブルでもって、この作品の魅力を余すところなく再現している。
粘らずべとつかないテンポ設定も僕の好みにぴったりだ。
カップリングは、ヨハン・セバスティアン・バッハやヴォルフガング・フリーデマン・バッハの鍵盤楽器のための作品を編曲した6つの三声のフーガK.404aから6番、1番、2番、3番の4曲。
常日頃不世出の天才ぶりばかり語られがちなモーツァルトが温故知新、並々ならぬ研鑚を重ねていたことの証明ともなる作品である。
ディヴェルティメント同様、音楽の駆け引きや調和を愉しむことができた。
いずれにしても、室内楽好き、古典派好き、人間関係の無駄な争いに倦み疲れた方に大いにお薦めしたい一枚だ。
2015年08月02日
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