☆夕暮れ社 いなもり支店vol.3.5 七夕月の里帰り公演
『ちょっと待って、エントロピー!!』
脚本・演出:稲森明日香
(2015年7月25日15時開演の回/元・立誠小学校音楽室)
夕暮れ社 弱男ユニットといえば、まずは村上慎太郎ということになるが、前回の本公演『プール』(2014年11月30日/京都芸術センター・フリースペース)で主役を張った南志穂や、先日の同志社女子大学のコンサートで見事な歌唱を披歴した藤居知佳子、最近一層活動の幅を拡げている伊勢村圭太、御厨貴とその他のメンバーも粒ぞろいだ。
そして忘れてならないのが、稲森明日香、向井咲絵のベテラン二人。
彼女らなくしては夕暮れ社 弱男ユニットが存立危機事態に陥る、と言っても過言ではないユニットの屋台骨である。
そんな稲森さんに向井さんが加わった、夕暮れ社 いなもり支店が、5月に東京で上演した『ちょっと待って、エントロピー!!』を京都で再演(一部、京都用に手直しが行われているよう)するというので迷わず足を運んだ。
登場人物は、手話で会話をする「聞こえない」多香子(稲森さん)、多香子の幼なじみで手話がわかる「聞こえる」かず代(向井さん)、手話がわからない「聞こえる」潮音(住吉山実里)の三人。
そんな三人が、職場の先輩の結婚式の余興を決めるために多香子の家に集まったものの…。
といった具合に話は進んでいくのだけれど、あえてくどくど詳しい内容については触れるまい。
人と人とがどう心を通い合わせていくか、人と人とのコミュニケーションのあり様あり方の滑稽さ、そして難しさ(もしかしたらそれは演劇活動、もっと直截的にいえば、弱男ユニットでのあれこれの遠映かもしれない)が、女性どうしらしいやり取りや、一歩前進二歩後退、じゃなくて、七歩進んで三歩下がる的な仕掛けを通して描かれていく。
中でも、多香子がまさしく内面を吐露する場面のおかせつなさ!
初の長篇作品ということもあってか、例えば、三人の背景(どんな職場?)が若干はっきりしないこととか、結末に到る葛藤がスルーされていることとか、パズルのピースが全て埋まり切れていないもどかしさを覚えたことも事実だけれど、いなもり支店、弱男ユニットに関わらず、夕暮れ社の作品に共通している、演者にとって負荷が大きいはずの事どもを何気ないそぶりで演じ切っている点に関しては、やはり大きな拍手を贈りたい。
稲森さん、向井さんはもちろんのこと、住吉山さんも、作品世界によく沿った演技体技を繰り広げていたと思う。
明日まで公演中。
ご都合よろしい方はぜひ!!
2015年07月25日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック