☆セルジュ・チェリビダッケが指揮したブルックナーの交響曲第7番
指揮:セルジュ・チェリビダッケ
管弦楽:ミュンヘン・フィル
(1990年10月18日、サントリーホール大ホール/デジタル・ライヴ録音)
<SONY国内盤>SICC1844
1990年といえば、ちょうど25年前。
大学に入って3年目となることの年は、よくオーケストラのコンサートに足を運んだ。
久しぶりに古いノートを取り出して確認したら、1月の関西フィルの定期にはじまって12月末の京都市交響楽団の第九定期に到るまで、しめて31回にものぼる。
まあ、いわゆるコンサート・ゴア(キチ)の方に比べたら物の数にも入らないだろうけれど、ほかになんやかんやと趣味嗜好の多い人間にしてみれば、月に2回強は、やはりけっこうな回数ということになる。
中でも強く記憶に残っているのは、ただし、音そのものではなくてムードであり、アトモスフェアに過ぎないのでがあるが、ゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団(4月18日、ザ・シンフォニーホール)とセルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(10月4日、フェスティバルホール)が演奏した、ブルックナーの交響曲第8番である。
と、言って、両者が自分にとってとびきり感動的な心を強く動かす演奏だったというわけではない。
前者はザ・シンフォニーホールという残響の高さが売り物のホールであるにもかかわらず、本拠地のデッドなホール対応の身も世も裂けよとばかりのブラス爆奏の鳴らせたい放題な音楽的マチズモにうんざりしたし、後者は後者で、その歩みの遅さには、何かとんでもないものを聴かされているという不思議な感情を抱かされた。
(第2楽章なんて、周囲は気持ちよく寝入っていたっけ…)
今回取り上げるCDは、その1990年の来日時にチェリビダッケとミュンヘン・フィルが演奏したブルックナーのCD。
ただし、こちらは第8番ではなく第7番のほう。
これまで映像として販売されていたし、海外ではCD化もされていたが、国内でのCDリリースはこれが初めてになる。
全曲75分以上、非常にゆったりとしたテンポの演奏だが、第1、第2楽章など旋律美が身上の作品ということもあって、心理的な遅さを感じることはあまりない。
第3楽章に、ちょっとおやとなったぐらいか。
それには、第1楽章のラストや第2楽章等々、音楽としての頂点がしっかりと設けられていることも大きいだろう。
(チェリビダッケのティーッという雄叫びが何度も聴こえる)
録音も鮮明で、ブルックナーの音楽にじっくりと浸りたい方々には大いにお薦めしたい一枚だ。
と、いうのは公式見解で、このライヴ録音を何度も何度も繰り返して耳にすることに、実は曰く言い難い割り切れなさを感じてもいる。
本来自分にとって不可思議で不可解なものであるかもしれないものを、こうやって再生して何度も聴くことで単純な言葉に落とし込んでしまういかがわしさというか。
しかも1枚が僅か1000円。
その点でもいろいろと想うことがある。
なお、同じ廉価シリーズで10月20日に収録された交響曲第8番も発売されているが、こちらはあえて耳にすることはないと思う。
2015年06月06日
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