☆マナコルダが指揮したシューベルトの「ザ・グレート」
指揮:アントネッロ・マナコルダ
管弦楽:カンマーアカデミー・ポツダム
(2014年6月/デジタル・セッション録音)
<SONY/BMG>88875063232
イタリア出身で、マーラー・チェンバーオーケストラのコンサートマスターから指揮者に転じたアントネッロ・マナコルダと手兵カンマーアカデミー・ポツダムが進めてきた、シューベルトの交響曲全集の完結篇である。
一部にピリオド楽器を使用するなど、いわゆるピリオド奏法を援用した演奏で、そうしたスタイルが作品の特性を巧みに描き出している。
簡潔に言い表すならば、それは音楽の劇性、歌唱性ということになるだろうか。
シューマンが評したような「天国的な長さ」のイメージからは外れるものの、歯切れがよくてメリハリの効いた推進力に満ちたマナコルダの音楽づくりは、シューベルトのこの交響曲の持つ若々しさ、躍動感をよく再現しているのではないか。
瑞々しい第1楽章、リズミカルで生命力にあふれた第4楽章、ともにわくわくする。
一方で、第3楽章の中間部分など、シューベルトの旋律の美しさ、歌い回しの魅力も存分に味わうことができる。
そして、第2楽章。
同じマナコルダとカンマーアカデミー・ポツダムの未完成交響曲ともつながる、透徹して鮮烈な表現で、中でも8分59秒から9分過ぎ辺りの10秒ほどの休止は、このCDの白眉だと思う。
カンマーアカデミー・ポツダムも、マナコルダの意図によく沿って、ソロ・アンサンブルともに密度の濃い演奏を繰り広げており、間然とするところがない。
近年SONY/BMGレーベルがリリースした「ザ・グレート」には、トーマス・ヘンゲルブロック指揮ハンブルクNDR交響楽団、デヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(RCA。これも全集)があるが、音楽の全体的な流れという意味でも細部の処理という意味でもオーケストラの音色という意味でも、このマナコルダ盤が僕には一番しっくりくる。
大いにお薦めしたい。
(ただ、ジンマンの全集もそうだったけれど、このマナコルダの全集も近いうちに廉価ボックス化されるのではないか。装丁にこだわらない方は、そちらを待たれたほうがよいと思う)
なお、録音会場は、これまで数多くの名盤を生み出してきたベルリンのイエス・キリスト教会である。
2015年05月04日
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