2015年04月10日

タワーレコードのVINTAGE COLLECTION +plus特別編〜ジョージ・セルDecca、Philips録音集を厳しく批判する

 昨夜、ジョージ・セル(ハンガリー出身で、ヨーロッパからアメリカに活動の場を移した今は亡き指揮者。特に、アメリカの地方都市オーケストラであったクリーヴランド管弦楽団を世界一流のオーケストラに鍛え上げたことで有名)がDECCAやPHILIPSに遺した録音を、タワーレコードがオリジナル企画としてリリースすることを知り、おおやった! と一瞬大喜びしたのもつかの間、それがすぐに糠喜びとわかり、一転強い失望と激しい怒りに変わった。

 と、言うのも、セルにとって隠れた名盤とでも呼ぶべきロンドン交響楽団とのヘンデルの管弦楽曲集が、王宮の花火の音楽は同じくロンドン交響楽団とのチャイコフスキーの交響曲第4番に、水上の音楽など残りはウィーン・フィルとのベートーヴェンの劇音楽『エグモント』にと、結果ぶつ切りにされてカップリングされることが判明したからである。

 もちろん、これが元よりこだわりのない、ただただ長時間曲を詰め込みましたという寄せ集めの継ぎ接ぎ廉価アルバムであるならば文句はない。
 そんないかもの、はなから目も向けぬだけだ。

 だが、今回のリリースが厄介なのは、ブックレット写真はLPのオリジナルのものを使用する等、中途半端にこだわったものだからである。
 ならば、何ゆえLPオリジナルのカップリングにまでこだわらないのか。
 そもそも、ただ単にその録音音源を耳にしたいというのであれば、今時CDなど買わない。
 ネット配信なりyoutubeなりで事足りる。
 もしくは、ひとまとめになった輸入盤の廉価ボックスセットを買う。
 あえて一枚物のこうしたアルバムを買おうとする人間は、LPのコレクターにまではならないものの、「全体の構成に腐心しながら」「宝石をつらねてひとつの首飾りをつくるよう」な先達たちの様々な配慮が行き届いたオリジナルのカップリングに敬意を抱きはする、マニア的な性質を持った人間であろう。
 だから、一枚のアルバムの収録時間が40分だって45分だって、買うものは買う。
 そうした人間が、何を好き好んでオリジナルLPの「バラバラ殺人」(以上、「」内は、俵孝太郎の『新・気軽にCDを楽しもう』<コスモの本>より引用。そういえば、俵さんはタワーレコードと関わりが深いんだった)に加担せねばならぬのか。

 だいたい、セルとロンドン交響楽団によるあの王宮の花火の音楽をチャイコフスキーの交響曲第4番の前後に置くという今回の企画者の意図や神経がよくわからない。
 いや、これが今回のセルのシリーズに限らず、どの企画においても、オリジナルのカップリングなんて知ったことか、俺様は全能者、あれを足してあれを引く、カップリングは俺様の想いのまま、と傍若無人なカップリングに終始するのであれば、残念だけど「機智害じゃから仕方ない」と諦めもつく。
 ところが、同じタワーレコードのオリジナル企画でも、ハンス・クナッパーツブッシュとウィーン・フィルが遺した『ウィーンの休日』、『ポピュラー・コンサート』、ブラームスの管弦楽曲集は、なんとLPのオリジナルのカップリングのままで発売されている。
 この統一性のなさはいったいなんなのだろう。
 クナッパーツブッシュは売れるが、セルではあまり売れまいと考えたのか。
 それとも、企画の予算が少なかったのか。
 それでは、どうして今回チャイコフスキーのリリースは次の機会に延期し、かつて国内で1000円盤としても発売されたヘンデルをリリースするという発想に至らなかったのか。
 いずれにしても、演奏や録音そのものに対する愛着や執着、細やかさ、徹底的なこだわりの欠落を僕は強く感じてしまった。

 むろん、嫌なら買うな、お買い上げになるお客さんは山といる、という売り手の発想も正論である。
 こちらだって、そんな中途半端なCDは買えないし、買いたくはない。

 ただ、海外(輸入版)のDECCAレーベルが、「オリジナル」と称してカップリングがLPオリジナル通りではないばかりか、LPのオリジナルのジャケット写真を斜めにして使用するような無茶苦茶な状況の中、今回このような中途半端な形でのリリースが為されることで、セルの遺した音源のLP同様のカップリングとジャケット写真を使用したまさしく「オリジナル」な形でのCDリリースが今後しばらく望めなくなったことは、やはり指摘しておかなければなるまい。
 全くもって、中途半端な愛着や執着、こだわりほど有難迷惑で罪深いこともあるまい。
posted by figarok492na at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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