2014年10月20日

第19次 笑の内閣『超天晴!福島旅行』

☆第19次 笑の内閣『超天晴!福島旅行』

 作・演出:高間響
(2014年10月19日18時開演の回/アトリエ劇研)


 舞台は滋賀県のとある私立高校。
 学外出身者による外様改革派の教員たちは、来年度の修学旅行地決定の会議を利用して、学園OBの守旧派からヘゲモニーを奪おうと画策する。
 その切り札となる修学旅行の候補地は、なんと福島。
 だが、彼彼女らの目論見はなかなか一筋縄では適わなくて…。

 といった具合に物語が始まる第19次笑の内閣『福島第一原発舞台化計画〜黎明編〜超天晴!福島旅行』は、高間響という劇の造り手と笑の内閣という集団の進境変化を如実に反映した作品であり、公演となっていた。

 公演プログラムにもある通り、東浩紀氏らの提唱する「福島第一原発観光地化計画」に触発された題材であり、実際ワークショップを重ね、現地を訪問した上で生み出された作品なのだけれど、そこは笑の内閣、ルーティンギャグやサタイア(時局諷刺ネタ)など、笑の仕掛けにももちろん欠けていない。
 加えて、高間上皇がもともと強い影響を受けた三谷幸喜(だって、笑の内閣は『笑の大学』から来てるんだもん)にも通じる、人の弱さや内面の葛藤、人間関係のどろっとした部分、さらにはじんとくるような心の動きも織り込まれて、約90分、間然としない観応えのある舞台に仕上がっていたのではないか。
 まずもって、その点を大いに評価したい。
 ただ、だからこそ、福島を主題として扱うことへの高間上皇の配慮、というか距離感が筋運びの節々からうかがえたことも事実で、そこをどう他の部分と慣らしていくか、もしくは開き直ってもっと徹底的に笑いのめすか、それとも齟齬は齟齬としてより物語内に取り込んでしまうか、そのいずれかの判断が必要なのではないかとも思った。
 また、東京公演もあるので詳述は控えるが、展開としての粗さがなめされたり、登場人物の背景や関係性が一層細かく描き込まれば、彼彼女らの言動により説得性が生まれるとも感じた。

 6回目の公演ということもあってかライヴ特有の粗や傷は見受けられたし、経験等からくる技量の長短はどうしても否めないが、演者陣は個人としてもアンサンブルとしても、作品世界によく沿う努力を重ねていたと思う。
 歌唱面を含めてヒロインとしての過不足のない素質を持った中村彩乃をはじめ、看板役者ぶりが板についた髭だるマン、諸江翔大朗、抑制のきいた丸山交通公園、よいキャラクターの持ち主黒須和輝、松田裕一郎、由良真介、楠海緒、山下みさお、横山清正、有本ミチヨの健闘を讃えたい。
(だいたい、「公演に出てやっている」と内心思っているんじゃないかと疑いたくなるような演者が一人もいないのは、笑の内閣の支持者としてはとても喜ばしいことだ)
 公演終了後、高間上皇や出演者松田さんとも少し話をしたが、今回の松田さんや諸江君のような経験豊富な客演陣を迎えることで、これまでの内閣の面々の演技アンサンブルもひときわ精度を上げていくことと思う。
 それと、高間上皇は今回細かく演出を付けているように見受けられたが(はじめのほうなど、あからさまに台詞を置きにいって感じがした)、可能であればピッチングコーチやバッティングコーチ、守備走塁コーチのような様々な演技指導のできる人材が複数加わればとも考えたりもした。

 いずれにしても、高間響と笑の内閣のさらなる飛躍を心より期待したい。
 ああ、面白かった!
posted by figarok492na at 02:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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