☆シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番&ハンガリー風のメロディ他
ピアノ独奏:アルフレッド・ブレンデル
(1987年12月、オーベルプファルツ・ノイマルクト/デジタル・セッション録音)
<PHILIPS>422 229-2
7年ぶりになるか、先日、昔親しくしていた女友達と会った。
4歳になるお嬢ちゃんもいっしょで、1時間ほどだが、お互いの近況についてあれこれ話をすることができた。
時は止まらない、だから君は美しい。
という言葉を、ふと思いついた。
帰りがけ、このCDを手に入れた。
1987年12月の録音だが、それから1年近くが経った1988年10月11日(まだ昭和だ!)、大阪のザ・シンフォニーホールでピアノ・ソナタ第20番をメインにしたブレンデルのピアノ・リサイタルを聴いた。
たぶんこのCDのリリースと絡ませたプログラミングだったのだろう。
アンコールは、確かハンガリー風のメロディではなかったか。
大学に入り立ての僕は、同じ専攻の女性を誘ってこのリサイタルを聴きに行った。
恋心までは到ってないものの、当然シンパシーを抱いていたはずで、第20番の終楽章のはにかみながら希望を語っているような旋律の心地よさが今も忘れられない。
結局、彼女とはそこそこの距離感のままに終わってしまったのだけれど、だからこそほどよい記憶が残っているのかもしれない。
こうやって改めてCDで聴いてみると、ブレンデルの演奏に不満を述べることは容易だ。
丹念なアナリーゼに裏打ちされた深い読み込みの演奏であることに間違いはないが、それがかえって音楽の激しい心の動きに結び付かないもどかしさを与えていることも否定できまい。
それに、細部のたどたどしさ。
訥弁には訥弁のよさがあるとはいえ、シューベルトの音楽の持つ歌唱性の魅力を若干そいでしまっていることも事実だ。
それでも、同じ旋律を引用したハンガリー風のディヴェルティメントの第3楽章を意識しているのだろうか、早めのテンポをとったハンガリー風のメロディの過度に陥らない叙情性には、強く心を魅かれるが。
ほかに、16のドイツ舞曲とアレグレットが収められている。
いずれにしても、やはり時は止まらないからこそ美しいのだと思う。
2014年09月14日
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