2014年08月31日

演劇ビギナーズユニット2014 劇団サイハテ『ナツヤスミ語辞典』

☆演劇ビギナーズユニット2014 劇団サイハテ『ナツヤスミ語辞典』

 脚本:成井豊
 演出・脚色:村上慎太郎
 演出補:阪本麻紀、稲森明日香
(2014年8月30日18時半開演の回/京都市東山青少年活動センター創造活動室)


 例年京都市東山青少年活動センターで開催されている演劇ビギナーズユニットだが、21回目となる今回は、夕暮れ社 弱男ユニットの村上慎太郎を新たな演出担当に迎え、劇団サイハテの名で終了公演を行った。
 とり上げたのは、おなじみ演劇集団キャラメルボックス・成井豊の初期の作品『ナツヤスミ語辞典』(1989年初演)で、それこそ残り少ない夏休みの一日に相応しい舞台となっていたのではないか。

 まず参加者が集まって、それから自分たちで上演する台本を決定するというのが、ビギナーズユニットの恒例だけれど、今回のサイハテの場合、参加者=出演者と登場人物のキャラクターがバランスよく重なり合っていたように感じられた。
 当然そこには、演出の村上君はじめ、演出補の阪本さん、稲森さんたちの大きなサポートが存在するのだが、「中学生」や「大人」の色分けがなかなか巧く決まっていたと思う。
 ライヴ特有の傷や、経験の有無など個々の差はありつつも、心の動きに合った緩急強弱の変化や演者間でのスムーズな言葉のやり取りがよく心掛けられていたのではないか。

 また、村上君は、原作の世界観をしっかりと踏まえつつ、作品の結構や骨法(モノローグの多用であるとか、異なる場所・時系列に存在する登場人物間の会話とか)をクリアに再現していた。
 加えて、成井豊ならぬ尾崎豊に通じる主題をパッションで流したり、過度にリリシズムを強調したりしない適度な距離感も、僕には村上君らしく感じられた。

 いずれにしても、腹の底をぐっと掴んでかき回す激しさや強烈な慟哭とは異なる、鼻の奥がツンとするような切なくて懐かしい気持ちを味わうことのできる作品であり、公演だった。

 今回のビギナーズユニットに参加した皆さんの今後の一層のご活躍を心より祈願します。
 そして、残すところあと1回、最後の公演もぜひぜひ頑張ってください!
posted by figarok492na at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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