2014年08月21日

オビエド・フィルが演奏したサン・サーンスのアルバム

☆サン・サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番&交響曲第3番「オルガン付き」他

 独奏:アレクサンドレ・ダ・コスタ(ヴァイオリン)
 指揮:マルツィオ・コンツィ
管弦楽:オビエド・フィラルモニア
<WARNER>2564628144


 スペインのオーケストラが充実している。
 経済的状況の悪化で知られるスペインだが、スペイン国立管弦楽団やRTVE(スペイン放送)交響楽団、マドリード交響楽団といった首都マドリードのオーケストラばかりでなく、定期演奏会の回数や指揮者の顔触れを見る限り、地方のオーケストラの活動も非常に活発である。

 一例を挙げればガリシア交響楽団。
 CDだと、村治佳織がソロを務めたロドリーゴのアランフェスの協奏曲の伴奏程度しか思い浮かばないが、楽団が公式にアップしているyoutubeの動画を観聴きすれば、その充実ぶりがわかると思う。
 先頃亡くなったロリン・マゼールとのマーラーの交響曲第1番「巨人」やスタニスラフ・スクロヴァチェフスキとのブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」もそうだし、トン・コープマンやリチャード・エガーとのピリオド・スタイル全開の演奏もそうだけど、アンサンブルとしてのまとまりのよさ、インティメートな雰囲気が実に魅力的なのである。
 技術的な高さ、ではなく音楽性の高さを持ったオーケストラだと評したい。

 オビエド市交響楽団を母体に、1999年に新たに設立されたオビエド・フィラルモニアにとってメジャーレーベル・デビューとなる、このサン・サーンスの作品集も、そうしたスペインの地方オーケストラの現状を象徴する一枚になっているのではないか。
 なお、CDの売れ行きを考慮してか、今回のアルバムは、ワーナー・レーベル売り出し中の若手ヴァイオリニスト、アレクサンドレ・ダ・コスタ独奏のヴァイオリン協奏曲第3番と交響曲第3番「オルガン付き」をカップリングの両端に置くという、「両A面」体制がとられている。

 で、まずはヴァイオリン協奏曲だが、モントリオール出身のダ・コスタは、別のアルバムのブックレット写真から受けるイメージとは異なり、流麗で細やかな美音が持ち味のように感じられる。
 パッションに任せてエネルギッシュにぐいぐいと音楽を動かす行き方に比べれば、線の細さは否めないが、その分サン・サーンスの音楽の持つ古典的な明晰さと旋律の美しさにはぴったりだ。
 その意味でも、有名な序奏とロンド・カプリチオーソのほうが、よりダ・コスタの特質に合っていると思う。
 コンツィ指揮のオーケストラは、若干粗さはありつつも、丁寧な伴奏を心がけている。

 一方、オーケストラがメインとなる交響曲第3番では、第1楽章後半がとても印象に残る。
 同じ楽章の前半部分や、第2楽章前半の早いパッセージ、そして後半の高揚する部分では、オーケストラの硬さ、表面的なならされなめされていなさが、どうしても気になるのだが、第1楽章後半部分の静謐で官能的な美しさには、やはり強く心魅かれる。
 この部分を聴くためだけでも、といえば大げさになるけれど、このアルバムの聴きどころの一つであることは疑いようがない。
 そして、管弦楽のための「ホタ・アラゴネーサ」。
 僅か5分にも満たない小品だが、スペイン趣味にあふれた陽気で軽快なのりで、オーケストラの本領が発揮されている。

 メインの作品のファーストチョイスとしてはお薦めしにくいものの、スペインのオーケストラの今を識るという意味では、外せないアルバムだろう。
posted by figarok492na at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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