2014年08月01日

さよなら福田きみどりさん

☆さよなら福田きみどりさん


 福田きみどりさんがドキドキぼーいずを退団し、京都を離れることが発表された。
 今回の福田さんの決断に関しては、発表前にちらと伝わって来ていたし、僕自身いろいろと考えることもあるのだけれど、ここではあえて詳しく述べない。
 ただ、京都小劇場の中で期待と好感を抱いて接してきた演者さんの一人なだけに、自分なりの惜別の文章を綴ってみたいと思う。

 僕が福田さんの出演する舞台に接したのは、第2回京都学生演劇祭におけるドキドキぼーいずの『ブサイクハニーベイベー』(2012年2月19日、20日/アートコンプレックス1928)が初めてだった。
 お尻の大きさをコンプレックスに抱えつつ、ブサイクアイドルの頂点を目指して奮闘努力する田舎出の女の子を福田さんは熱演好演していた。
 ばかりではなく、自分自身の置かれた状況と内面をハト胸という登場人物に託して吐露する本間広大君を、福田さんは演技面でも精神面でも大きく支えているように僕には感じられた。
「彼女は主演女優じゃないんですか?」
 と、福田さんを第2回京都学生演劇祭の優秀助演女優賞に(勝手に)推したことについて問いかける人に、「まあ、彼女は黒澤明の『酔いどれ天使』の三船敏郎みたいなもんやから」と言って僕はお茶をにごしたのだけれど、実際はそうした彼女のサポートぶりを高く評価してのものだった。
 そして、『ブサイクハニーベイベー』の切ない完結篇となる京都造形芸術大学での公演(同年4月6日/京都芸術劇場Studio21)では、福田さんの補助者としての存在の大きさが一層鮮明に表わされていた。
(その意味で大きく悔やまれるのは、福田さんを最優秀助演女優賞に推さなかったことである。いや、西城瞳さんの受賞自体は全く問題ない。どうで自分勝手な賞なのだから、遠慮などせず最優秀だろうが優秀だろうがどんどん乱発しておけばよかったのだ)

 ところで、ドキドキぼーいずでの福田さんといえば、どうしてもその表情の魅力について触れておかなければなるまい。
 かつての日本テレビの名プロデューサー井原高忠(『ブサイクハニベイベー』で本間君が演じたプロデューサーの先駆者のような人だ)は、今は亡き坂本九へ「笑顔千両」という言葉を与えたそうだが、その伝でいくと、福田さんは「表情千両」ということになるのではないか。
 特に、ドキドキぼーいずにとって再旗揚げ公演となる『夢の愛』(2013年7月26日/KAIKA)での、全てを引き受けた上で踏み留まって見せる、ときにおかしく、ときに哀しく、ときに儚く、ときに力強い彼女の表情を、僕は忘れることができない。

 もちろん、ドキドキぼーいずの公演以外での福田さんも強く記憶に残っている。
 象牙の空港の第2回公演『20のアマルガム』(2012年7月15日/UrBANGUILD)での福田さんは、作・演出の伊藤元晴君の意図に沿って、同じ出演者の柳沢友里亜さんともども、くすんで鬱屈した感じをよく出していたし、それより何より、森陽平君や小堀結香さん、染谷有紀さんとのHOME『わたしのあいだ』。
 中でも、移転前のFactory Kyotoでの上演(2012年11月13日)では、一見すると澄んで静止しているような水面が空の青さや陽光、翳りを反映しつつ細かく動いているかのような作品世界に、福田さんの弱さと強さをためた身体性と、心の内を吐き出したくてそれでもそう出来ず内に向かって響かせているかの如き彼女の声が、よく合っていた。

 そうそう、福田さんが京都を離れることでとても残念なのが、福田さんが唖の娘カトリンを演じる、ベルトルト・ブレヒトの『肝っ玉おっ母とその子供たち』を観ることができなくなることだ。
 カトリンの弱さと強さとは、福田さんの抱えたそれとぴったりあてはまっただろうから。
 まあ、永榮紘実さんのおっ母と玉木青君の演出は無理としても、例えば岩手で森君の演出で上演される機会がないとまでは言い切れまい。
 その際は、ぜひおっ母は阿部潤さん(斎藤晴彦さんが演じてたんだから、男性だって無問題!てか、性別でとやかく言いなさんなよ)、イヴェットは島あやさん、なんてキャストはどうだろう。
 いやあ、これはぜひとも観てみたいなあ。
 いや、下手は承知で大佐役か何かで出演させてもらえないかなあ。

 いずれにしても、福田さんの今後のさらなるご活躍を心から祈るとともに、本間君をはじめとしたドキドキぼーいずの面々の今後のさらなるご活躍も心から祈りたい。

 それでは、さよなら福田きみどりさん。
 そして福田さん、ではではまたまた!
posted by figarok492na at 15:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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