☆ザ・ラストナイト・オブ・ザ・プロムス・コレクション
指揮:バリー・ワーズワース
独唱:デッラ・ジョーンズ(メゾ・ソプラノ)
合唱:ロイヤル・コラール・ソサエティ
管弦楽:BBCコンサート管弦楽団
(1996年1月/デジタル・セッション録音)
<PHILIPS>454 172-2
ロンドン音楽界の夏の夜の風物詩といえば、どでかいロイヤル・アルバート・ホールで連日開催されるプロムス(BBCプロムス)ということになるが、中でももっとも有名な最終夜(ラストナイト・オブ・ザ・プロムス)をスタジオ録音で再現したのが、このCD。
エルガーの行進曲『威風堂々』第4番に始まって、ウォルトンの戴冠行進曲『王冠』、エルガーのエニグマ変奏曲から美しい第9変奏「ニムロッド」、ホルストの『我が祖国よ、私は誓う』(惑星の木星の有名な旋律に愛国的な歌詞をのせたもの。平原綾香のJupiterの元ネタっぽく聴こえて仕方ない)、ヴォーン=ウィリアムズのグリーンスリーヴズの主題による幻想曲、エルガーの『朝の歌』、エリック・コーツの『ロンドン』から第3曲(行進曲)、ヘンデルの戴冠式アンセムから合唱曲、クラークのトランペット・ヴォランタリー、かつてのプロムスを代表する指揮者ヘンリー・ウッドが作曲した『イギリスの海の歌による幻想曲』(『埴生の宿』や、ヘンデルの『見よ、勇者は帰る』の旋律がまんま登場する)、アーンの『ルール・ブリタニア』、エルガーの『威風堂々』第1番の合唱付き、パリーの『ジェルサレム』、そしてイギリス国歌『ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン』でしめるという、まさしくプロムスのラストナイトの雰囲気が存分に味わえること間違いなしの一枚だ。
正直、レナード・スラットキンならずとも、その愛国心の称揚には辟易しなくもないのだが、ばらばらなものを一つに繋ぎとめるためにはそんな仕掛けも必要だろうということは想像に難くないし、それより何より、音楽そのものが陽性勇壮で聴きやすい。
(ふと、『軍艦行進曲』や『愛国行進曲』といった作品が居並んで、『君が代』でしめるという日本版プロムスのラストナイトを想像してしまった。このご時世、全くありえない話でないのが…)
ワーズワースとBBCコンサート管はツボをよく押さえた演奏で、過不足がない。
イギリス音楽好き、のみならず、理性の働く愛国心をお持ちの方々には、安心してお薦めしたい。
2013年12月30日
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