音質的な問題はありつつも、古今東西の様々な音源に触れることができるのは、やはりyoutubeのありがたみの一つである。
昨夜は、鑑賞用の名曲アルバム(LP)からの音源を中心に愉しんだ。
まずは、「おやかた」近衛秀麿がフィルハーモニア交響楽団を振ったハイドンのセレナード(現在は、ホフシュテッターの作曲とされる弦楽4重奏曲第17番第2楽章の弦楽合奏版)。
これは、子供の頃、両親に買ってもらって愛聴した日本コロンビア(学研)の名曲集「こどものクラシック」(25センチLP)中の録音で、録音用の寄せ集めのメンバーか既存の団体の変名によるアンサンブルだろうが、しっとりたっぷりと鳴らされた弦楽が美しく、とても懐かしかった。
続いては海外の録音で、エドゥアルト・ファン・ルモーテル指揮セントルイス交響楽団が演奏したプロコフィエフの歌劇『3つのオレンジへの恋』から行進曲を聴く。
ひょこひょこピコピコした音質演奏が幸いしたのか、この曲が『スター・ウォーズ』の帝国のマーチ(ダース・ベイダー・マーチ)の下敷き(の一つ)ということが今頃になってわかった。
それにしても、いつもながらジョン・ウィリアムズは「いただき」が巧い。
アメリカの久石譲だ。
いや、逆か。
「いただき」の巧さといえば、こっちもか。
芥川也寸志指揮旧東京交響楽団が演奏したハチャトゥリアンのバレエ音楽『ガイーヌ』から剣の舞(この録音の存在は、知らなかった)を聴いて、思わず玉木宏樹が作曲した懐かしの時代劇ドラマ『大江戸捜査網』のテーマ曲を聴いてしまった。
(『大江戸捜査網』は、ミクロス・ロージャやラロ・シフリンっぽくもあるのだが、やっぱり大枠は剣の舞なんじゃないかな)
ところで、玉木さんは旧東京交響楽団のヴァイオリン奏者だったんだけど、上述した剣の舞のセッションには参加していたのだろうか。
もしそうだったら、ちょっと面白いんだけどなあ。
エーリヒ・ベルゲル指揮読売日本交響楽団が演奏したシベリウスの交響詩『フィンランディア』とドビュッシーの牧神の午後への前奏曲は、残念な出来。
一応れっきとしたプロの仕事ではあるのだが、個々の技量に加えて、アンサンブルがもっさいというか、粗いというか。
フィンランディアの勇壮な部分など、昔々の特撮映画か何かの「防衛隊出撃!」的な雰囲気である。
ちなみに小川昂編集の労作『日本の交響楽団』、並びに『新編日本の交響楽団』<民音音楽資料館>によると、1998年に亡くなったルーマニア出身の指揮者ベルゲルは、1975年7月と1986年11月に読売日本交響楽団の定期演奏会に登場しているので(あと、1982年11月にはNHK交響楽団の定期公演も指揮している)、そのいずれかの際の録音と思われる。
そして、ガエタノ・コメリが旧日本フィルとコロンビア合唱団を指揮したヘンデルのオラトリオ『メサイア』からハレルヤ・コーラスは、予想通り、今ではめったに聴くことのできないオールド・スタイルの演奏だった。
ムソリーニによって戦前派遣されたというコメリはイタリア出身の指揮者で、音楽教育に携わったほか、日本のオペラの基礎づくりに努めたり、皇紀2600年を記念した演奏会でピツェッティの交響曲を指揮したりもしていた。
(加えて、ジョセフ・ローゼンストック来日直前の1936年1月の新交響楽団=現NHK交響楽団の定期公演を指揮してもいる)
ゆったりとしたテンポと一音一音を丁寧に歌う生真面目な合唱に、高校時代、長崎市内の県立五高校による連合音楽祭で歌った同じ曲を思い出した。
あのときは速く歌おう、速く演奏しようとする未熟な合唱とオーケストラに、「走るな」とA先生がお怒りになったものだが、21世紀を迎えた今では走りに走って装飾音までつけたハレルヤ・コーラスが当たり前というのだから隔世の感ありだ。
ほかに、昭和のヤマカズさん山田一雄指揮旧東京交響楽団が演奏したスッペの喜歌劇『軽騎兵』序曲と渡邉暁雄指揮旧日本フィルが演奏したヴォルフ=フェラーリの歌劇『聖母の宝石』間奏曲も聴けて、大いに満足。
ああ、愉しかった
2013年11月21日
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