2013年10月28日

ぶれる女ぶれない女 象牙の空港#4『顔面売買』

☆象牙の空港 #4『顔面売買』

 作・演出:イトウモ
(2013年10月27日19時開演の回/人間座スタジオ)



 象牙の空港にとって第四回目の公演となる『顔面売買』は、「私」性を排除しよう、虚構性に特化徹底しようというイトウモの創作姿勢、作家性がよく表われた作品となっていた。
 そして、作品そのものとしても、演者陣の演技としても女性が中心に置かれた内容ともなっていた。

 僕自身は、永榮紘実と柳沢友里亜という好みの演者がたっぷり演技を披歴していたこと、例えば、柳沢さんと稲葉俊とのやり取りを後半永榮さんが改めて反復するあたりなど、稲葉君のウケの演技も含めて両者の違いを愉しんだし、どこかベルイマンを想起させるような内面心理に踏み込んだ意匠に強く興味を覚えたりもした。
 ただ一方で、演技映像と様々な仕掛けが施された結構展開が、ときとして作品の根幹にある人と人との関係性を見えにくくしていたこと、イトウモが意図していた以上の夾雑物となってしまっていたこともやはり否めまい。
 よりシンプルな構成でモティーフ(この場合、一般的な意味合いよりも音楽的な意味合いに近い)を明示するか、逆に意匠の精度を高めて演劇的趣向、フィクションとしての効果を強めるか、もしくは両者のバランスを一層巧くとっていくか、その選択がイトウモの今後の大きな課題になっていくように思う。


 演者陣では、どうしても柳沢友里亜と永榮紘実の二人からということになる。
 あなた柳沢さんは「ぶれる」女。
 僕の観た回ではライヴ特有の傷がどうしても気になって仕方なかったが、心の動きと身体の動き表情の変化が細かく結び付く演技のあり様は、彼女ならではのものとも感じた。
 イトウモの配役も大きいのだけれど、所帯じみてくたぶれた感じの今回の役回りは今の柳沢さんにとてもぴったりだった。
(昨年の京都学生演劇祭、劇団ヘルベチカスタンダードの『あっぱれ!ばかしあい 三千世界の果てはまほろば』での初々しく瑞々しい彼女の姿を記憶しているので、少々時の流れの残酷さも感じないではないのだが。僅か一年とちょっと!!)

 こなた永榮さんは「ぶれない」女。
 思索するとともに行動(感動)する人でもあろう彼女にとって、今回の役柄はそれほど容易なものではなかったように思うのだけれど、「観察者」である部分でも、一転役割を逆転し激しい感情表現を求められる部分でも、「ぶれない」演技を心がけていたのではないか。
 だからこそ、永榮さんの一層のステップアップと演技の磨き上げを心より期待したい。

 また、稲葉君、坂口弘樹、うめっちの男性陣もそれぞれの特性(長所短所)をよく示していた。
 正直、「ぶれなさ」が求められる部分では個々の苦しさが透けて見えたりもしたが、会話の部分では彼らの持つ長所魅力(一例を挙げれば、稲葉君の幅の広さ、坂口君の繊細さと陽性、うめっちの舞台上での存在感)を感じたことも事実だ。
 各々のさらなる活躍が愉しみである。

 いずれにしても、先述した「私」性の排除をはじめ、イトウモと象牙の空港の今後の活動を注目していきたい。
posted by figarok492na at 02:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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