2013年09月23日

ほんの夢の入口 鯖ゼリー第一回公演『鯖からミシン』

☆鯖ゼリー 第一回公演『鯖からミシン』

 作・演出:鯖ゼリー
(2013年9月22日20時開演の回/人間座スタジオ)


 私には夢がある。
 とは、ある有名なスピーチの一節だが、劇団愉快犯の旗揚げメンバーの一人でOBの鯖ゼリーにとって、今回の『鯖からミシン』は、自らの夢の結実といっても過言ではないのではないか。

 一見脈絡のない、往年の名バラエティ番組『ゲバゲバ90分』を彷彿とさせるような(笑いを専門としない演技者が「まじめに」ギャグに取り組むという点でも、両者は共通している)、シュールなショートコント集。
 その実、きっちり通底したモティーフが仕込んであったりもして、それこそ愉しくしかしどこか不気味な夢を観終えたかのような、はははふうという気分にとらわれた。
 正直、基本的には舞台上の責任ではないある要因で、途中まで全くのれない、どころか憤慨していたのだけれど(なんだよ、せっかくおもろい話をやってることはわかってるのに、そんなことされちゃあ、こちとらちっとも笑えないぜ。あっ、ほら鯖ゼリー君以外の演者陣の肩肘張った感じ、頑張り力みが目立ってきやがった…、という具合)、中盤以降それもおさまって、最後は抱腹絶倒、大いに笑って満足がいった。
 そして、鯖ゼリーという人間の笑いのセンスのよさと自負矜持、賢さに改めて感心した次第。

 演者陣では、まず鯖ゼリー本人。
 この人の独特のフラがなんとも言えずおかしい。
 先頃引退を表明したあの人っぽい人など、流石である。
 そして、永榮紘実。
 鯖ゼリーの「臆面ある」作品世界によく合っていて、僕はますます永榮さんのことが好きになった。
 永榮紘実は、京都小劇場の浜木綿子だぜ!

 また、北川啓太、小川晶弘、横山清正、九鬼そねみ、垣尾玲央菜、西城瞳(ワンポイントでよい仕事をしていた)、酒井捺央(彼女は、漱石は漱石でも『夢十夜』でなくて、『虞美人草』の藤尾が似合いそう)も、各々の人柄特性魅力をいい具合に発揮していたのではないか。
 そうそう、この『鯖からミシン』を観ていて、やはり笑いというものは、虐げられる者の痛みと喜びばかりか、虐げる者の痛みと喜びを知っていてこそのものなのではないかと改めて思ったのだけれど、意識無意識は置くとして、ほぼ九割方の演者さんはそのことを、その人なりに自らのものとしているように僕には感じられた。

 いずれにしても、鯖ゼリーにとって、今回の『鯖からミシン』は、ほんの夢の途中、いや、まだまだ夢の入り口だろう。
 今後の公演を心待ちにしたい。

 そして、ああ、面白かった!


 ちなみに今回の記事、当CLACLA日記の5000回目の投稿となります。
posted by figarok492na at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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