2013年09月01日

演劇ビギナーズユニット ばんびステップ『贋作・桜の森の満開の下』

☆演劇ビギナーズユニット2013 #20 ばんびステップ
 『贋作・桜の森の満開の下』

 脚本:野田秀樹
 演出:田辺剛
 演出補:阪本麻紀
(2013年8月31日18時半開演の回/東山青少年活動センター創造活動室)


 苦心惨憺。
 という言葉がどうしても思い浮かんでしまう。
 けれど、だからこそビギナーズユニットという企画の20周年に相応しかったのではないかとも、逆説的にではなく思ったりもした。
 つまり、一筋縄でいかないからこそ共同作業は尊いという意味で。

 それにしても、野田秀樹の『贋作・桜の森の満開の下』って、本当に難しい作品だなあと改めて感じる。
 身体と言語のアクロバティックな勇技で優擬で友義な遊戯の積み重ねののちに、痛切なカタルシスを生み出していかなければならないのだから。

 いくら自分たち自身で選んだテキストとはいえ、ほぼ舞台初心者という今回の参加者には、まずもって野田秀樹の台詞を覚え、それを身振り手振りを交えながら口にするということ自体難行苦行だったのではないか。
 作品の持つ「不穏さ」や遊びの部分がするするとすり抜けてしまったのは残念なことだけれど、大きな破たんなく幕切れを迎えられたことに、まずは拍手を贈りたい。
 ただ、技術的な問題はあるにせよ、全体的にテンポが遅く(緩く)感じられた点は、やはり気になった。

 そして、苦心惨憺という言葉は、当然演出の田辺剛にも大きく当てはまるものだと思う。
 下鴨車窓での「大島渚の『御法度』スタイル」とでも呼ぶべきキャスティングからもわかる通り、自らの演出家としての仕事は演技指導に非ずして、己がよしとする作品世界を優れた演者陣(演出家としての能力経験も豊富な)とともに再現していくことと考えているような田辺さんにとって、演劇初心者との舞台づくりは、一からやり直しというか、ここ最近の演出手法とは大幅に異なるものとなってしまっただろうからだ。
 と、言っても、田辺さんが演劇初心者の演出に劣ると言いたいわけではない。
 例えば、2002年の9月に今回と同じ東山青少年活動センターの創造活動室で上演された『そして校庭を走った』は、演劇初心者のみらいの会の面々を中心とした座組みではあったものの、ほどよいユーモアとリリカルさをためた瑞々しく気持ちのよい田辺さんにとって屈指の名作となっていたのだから。
 しかしながら、あくまでも『そして校庭を走った』は、田辺さんの作演出、あて書きであり、今回のような既成台本ではない。
 しかも、松田正隆さんや土田英生さんといった田辺さんにとってがっぷりよつに組み易い作家陣の作品ならいざしらず、相手は田辺さんと対極にあると言っても過言ではない野田秀樹である。
 苦戦は、初手から目に見えている。
 それでも、作品の要所を押さえながら、舞台の大筋を描き上げることには成功していたのではないか。
 音楽の使い方など、手が見えるというか、ちょっと露骨に感じたりもしないではなかったが。
(演技指導いう意味も含めて、アクターズラボの公演クラスと同様、演出補の阪本麻紀の作業も高く評価すべきだろう。彼女のサポートの存在を忘れてはならないと、僕は思う)

 繰り返しになる部分もあるが、演者陣の面々はよく頑張っていた。
 中でも、夜長姫を演じた野村明里の表情の豊かさが強く印象に残る。
 この役は、私のものという強い意志と自負も表われていた。
 ちょっとばかり有馬稲子っぽくもあったけど。
 受ける耳男の辻井悟志の真摯さもいい。
 ほかに、王役の松井壮大の軽さも今後が気になるところだ。
 あと、井戸綾子は何日の長というか、台詞のないときの表情が演劇の経験を感じさせた。
(もしかしたら、井戸さんには男の役を振ってもよかったんじゃないのかな。女性が男性の役を、男性が女性の役をやっても、ちっともおかしくないはずだしね)

 いずれにしても、皆さん本当に本当にお疲れ様です!
posted by figarok492na at 01:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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