☆メニューインとロイヤル・フィルが演奏した大管弦楽版のヘンデル
指揮:ユーディ・メニューイン
管弦楽:ロイヤル・フィル
(1986年/デジタル・セッション録音)
<RPO>CDRPO 8002
名ヴァイオリニストとして知られたユーディ・メニューインは、晩年積極的に指揮者としての活動を繰り広げた。
ロンドンの五大オーケストラの一つロイヤル・フィルは、そんなメニューインが密接なつながりを持ち続けたオーケストラであり、両者は複数のレーベルに少なからぬ録音を遺している。
今回とり上げるCDは、ロイヤル・フィルの自主レーベルからリリースされた一枚で、大管弦楽用に編曲された『王宮の花火の音楽』(ベインズ&マッケラス編曲)、『アマリリス』組曲(ビーチャム編曲。ビーチャムはロイヤル・フィルを創設したイギリスの有名指揮者)、組曲『水上の音楽』(ベインズ編曲)が収められている。
(ちなみに、メニューインとロイヤル・フィルは、同様のヘンデルのアルバムをもう一枚録音していた)
あと数年も経ぬうちに、いわゆるピリオド・スタイルがヘンデルやバッハといったバロック音楽演奏の主流を占めることになるわけで、まさしく貴重な録音と言えるだろう。
実際、ストコフスキー編曲による『水上の音楽』が録音されたりはしているものの、それはあくまでもストコフスキーというくくりによるもので、ヘンデルの大管弦楽版というコンセプトでの録音は、当方の知る限りほとんど為されていないのではないか。
バッハのトランスクリプション集を録音したエサ・ペッカ・サロネンとロスアンジェルス・フィルのコンビに期待していたが、結局だめで、こうなったらシャンドス・レーベルで活躍中のアンドルー・デイヴィスあたりの奮起を待つほかあるまい。
メニューインの若干たどたどしい音楽運びに加え、いくぶんくぐもった音質もあって、それこそ編曲者の一人であるチャールズ・マッケラスだとか、ヴァーノン・ハンドリーの指揮だったら、もっとシンフォニックシンフォニックしたロイヤル・フィルの特性魅力が巧く引き出されていただろうになあと思わずにもいられないのだけれど、堂々麗々とたっぷり鳴らされる『王宮の花火の音楽』の序曲や『水上の音楽』のホーンパイプを聴くと、これぞ「大英帝国」という気分に浸れてしまうのだからなんとも面白い。
(いやまあ、これらの作品の来歴はひとまず置くとしても、ヘンデルのイギリスでの活動、劇場での成果が後代の作曲家たちの音楽語法に影響を与えていることも確かだから、「大英帝国」云々は、あながち的外れなことじゃないのだが)
大オーケストラでヘンデルの音楽を愉しみたい方には大いにお薦めしたい一枚である。
なお、『王宮の花火の音楽』や『水上の音楽』の大管弦楽版でより有名なハミルトン・ハーティ編曲を利用した録音としては、ジョージ・セル指揮ロンドン交響楽団<DECCA>(ただし、セル自身による改編あり)、マルコム・サージェント指揮ロイヤル・フィル<EMI>、アンドレ・プレヴィン指揮ピッツバーグ交響楽団<PHILIPS>などが挙げられる。
2013年07月17日
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