2013年04月16日

第17次笑の内閣『65歳からの風営法』

☆第17次笑の内閣『65歳からの風営法』

 作・演出:高間響
(2013年4月16日15時開演の回/METORO)


 戦前戦後を一貫して、思想信条や言論学問、表現の自由のために闘い続けた弁護士海野普吉の評伝、入江曜子著の『思想は裁かれるか』<筑摩選書>を読み終えたばかりだが、その海野普吉の姿と笑の内閣の高間響の姿とが重なり合うような気がすると記せば、多くの人たちは「えっ?突然あんたは何を言い出すのかいな」と目を白黒させるかもしれない。
 世評も高い人物と高間君を同一視するなんて。
 けれど、他者の利害と自己のそれとの関係を視野にも入れつつ、強い力で人の自由を奪おうとするあれやこれやに怒り憤りを覚え、なおかつそれをわかりやすく説き明かし、しかも自分の論敵さえも納得するようなバランスのとれたやり方で対峙していこうとする姿勢は、やはり海野普吉と高間響に大きく共通することだと思う。
 もちろん、法そのものと、笑いの勝ったお芝居演劇という武器の違いも忘れてはなるまいが。

 そんな高間響と笑の内閣が今回テーマにとり上げたのは、昨今反対運動が盛り上がりつつある、風営法におけるダンス規制とクラブ摘発の問題である。
 で、僕自身、高間さん同様(公演プログラムの「あいさつ」参照)、ダンスにもクラブにもほとんど興味関心を持ってこなかった人間ではあるのだけれど、今回の『65歳からの風営法』を観ることで、風営法によるダンス規制が突っ込みどころの多い時代錯誤で拡大解釈の恐れの強いものであること、そしてそれが演劇をはじめとする表現活動を行っている人間にとって密接に関係しているものであることを、よく理解することができた。

 と、こう書くと、なんだそれってアジテーション演劇じゃん、「ためにするお芝居」はねえって声もあるかもしれないが、さにあらず。
 先述した如く、わかりやすいたとえ話(シチュエーション)に加え、自分は本来ダンスやクラブなんて「どっちでもいい」ことなんだけどという視点からなるばく客観的に描かれる努力が為されていて、全く押しつけがましさを感じない。
 高間さんの狙いや仕掛けはわかりつつも、あいにく僕の観た回はトラブルもあったりして、中盤以降までどうにも乗り切れないもどかしさを覚えてしまったが、丸山交通公園の登場あたりから盛り返したのではないか。
 展開その他、粗さを感じた部分もなくはなかったのだけれど、表面的な物語だけではなく、クラブという会場の雰囲気を巧く取り入れた作劇であり、しんみりさせどころもよく設けられていたように思う。

 演者陣は、今回に限ってならば丸山君が堂々のMVP。
 笑いのことがよくわかっているし、人情味が必要とさえる部分もよく演じていた。
 ただ、公演全体というか、アンケートでMVPにあえて推したのは、小林まゆみだった。
 と、言うのも、例えば努力クラブの第1回目の公演やC.T.T.でのピンク地底人の上演で、他の演者に比べれば確かに技術的には一程度の水準にありつつも、どうしても手わざが先に来て、「テレビの再現フィルム的」な巧さに留まっているように感じられてならなかったものが、今回の『65歳からの風営法』では、演技の精度のよさはそのままに、演じた登場人物の真情(それは、高間さんのそれでもある)と小林さんの内面にある表現への欲求、演技への欲求とがしっかり結びついて表わされていたように思われたからだ。
 その意味でも、僕はこの『65歳からの風営法』を観ておいてよかったと強く感じた。
 ほかに、田中浩之(今気になる演者の一人)、髭だるマン、しゃくなげ謙治郎、伊藤純也、藤井麻理(今回は彼女の柄に合っていたのでは?)、由良真介、廣瀬愛子、高間さん自身、清水航平、抹茶ぷりんらが出演。

 いずれにしても、単に面白さ笑いを追求しているからだけではなく、「今」だからこそ、「負けの数」を少しでも減らしたいからこそ、今後も笑の内閣を応援し続けたい。

 ああ、面白かった!
posted by figarok492na at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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