2013年03月01日

パーヴォ・ヤルヴィの指揮によるシューマンの交響曲第2番&序曲集

☆シューマン:交響曲第2番&序曲集

 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
管弦楽:ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
(2011年4月、12月&2012年3月/デジタル・セッション録音)
<RCA SONY/BMG>88765 42979 2 SACD


 先頃hr(フランクフルト放送)交響楽団のシェフの座を降りることが伝えられたパーヴォ・ヤルヴィだが(もしかしたら、ベルリン・フィルを狙っているのか?)、このhr響をはじめ、パリ管弦楽団、そしてドイツ・カンマーフィルと精力的な演奏活動、並びに各々のオーケストラの特性をよく踏まえた録音活動を繰り広げている。
 中でも、ハインリヒ・シフ、トーマス・ヘンゲルブロック、ダニエル・ハーディングら歴代指揮者とともにピリオド・スタイルに磨きをかけ続けてきたドイツ・カンマーフィルと録音したベートーヴェンの交響曲全集は、ピリオド奏法の援用によるモダン楽器オーケストラの演奏の模範解答とでも呼ぶべき過不足のない内容となっているのではないか。

 そうしたパーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルがベートーヴェンの次に着手したのは、シューマンの交響曲全集である。
 で、すでに第1番「春」&第3番「ライン」がリリースされているのだけれど、今回とり上げるのは、僕が大好きな第2番と4つの序曲が収められた一枚だ。
(なお、もともとSACDと発売されているものを、僕はCD面で聴く)

 上述したベートーヴェン同様、いわゆるピリオド奏法を援用した、スピーディーでクリアでスマート、なおかつシンフォニックで劇性に富んだ音楽づくりで、交響曲第2番では、レナード・バーンスタインがこの曲の第2楽章を評して言った「mad(気狂い)」な感じや前のめり感は若干馴らされてしまっているように思わないでもないのだが、とても見通しと聴き心地のよい演奏であることも確かだ。
 加えて、小編成ということもあってだろう、同じく交響曲など、シューマンのオーケストレーションの特異さがよくわかる演奏ともなっている。
(終楽章=トラック4の2分15秒あたりの、オルガン的、もしくは金属的な鋭い響きが強く印象に残る)

 また、このアルバムでは、『マンフレッド』、『ヘルマンとドロテア』(ゲーテの作品によるもので、フランス国歌『ラ・マルセイエーズ』がしつこいほどに引用される。急進的と伝えられるシューマンの「政治性」については、いずれ詳しく調べてみたい)、『メッシーナの花嫁』、『ゲノヴェーヴァ』の4つの序曲も聴きものだろう。
 これまでピリオド・スタイルやピリオド楽器のオーケストラでほとんど録音されてこなかった曲目だけに貴重だし*、音楽のツボをよく押さえたリリカルでドラマティックな演奏も充分に満足がいく。

 いずれにしても、パーヴォ・ヤルヴィという指揮者の力量が十二分に発揮された、安心してお薦めできるアルバムだ。


*注
 そもそもシューマンの序曲集自体、録音が少ない。
 交響曲全集のカップリングは置くとして、序曲集という形では、ヨハネス・ヴィルトナー指揮ポーランド国立放送交響楽団<NAXOS>、リオール・シャンバダール指揮ベルリン交響楽団<ARTE NOVA>、パーヴォ・ヤルヴィの父親であるネーメ・ヤルヴィ指揮ロンドン交響楽団<CHANDOS 一枚物のブラームスの交響曲全曲にカップリングされていたのをまとめたもの>を思いつく程度である。
posted by figarok492na at 17:01| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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