☆ツェムリンスキー:交響曲第2番&詩篇第23篇
指揮:リカルド・シャイー
合唱:エルンスト・ゼンフ室内合唱団
管弦楽:ベルリン放送交響楽団
(1987年9月/デジタル・セッション録音)
<DECCA>421 644-2
CDの登場がクラシック音楽の世界に与えた恩恵の一つとして、それまであまりとり上げられてこなかった作曲家なり作品なりの録音が活発に行われるようになったことを挙げることができるのではないだろうか。
むろん、LP時代からのマーラー・ブームや、一部の演奏家・プロデューサーによる地道な録音活動も忘れてはならないだろうが、やはりシュレーカーやコルンゴルト、そしてツェムリンスキーら独墺系の作曲家たちの再評価は、CDの誕生と分けては考えられないものであると思う。
そして、デッカ・レーベルが1990年代に積極的に進めた「退廃音楽(ENTARTETE MUSIK)」シリーズは、ナチス・ドイツによって退廃音楽の烙印を押された結果、急速に勢いを失い、第二次世界大戦後も時代状況の変化の中でなおざりにされてしまった作曲家たちのリバイバルを期した、CDという記録媒体によく沿った意欲的な企画であったとも思う。
(世界的な経済不況の影響により、その「退廃音楽」シリーズが頓挫する形となってしまったことは、なんとも残念なことだ)
今回とり上げる、リカルド・シャイー指揮によるツェムリンスキーの交響曲第2番を中心としたアルバムは、上述したデッカ・レーベルの「退廃音楽」シリーズの先駆けと評しても、まず間違いではないだろう。
ただし、シャイーがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団他と録音した同じ作曲家の叙情交響曲などと比べて、1897年に作曲された交響曲第2番では、「退廃音楽」と呼ばれるような、実験的な手法技法や鋭く激しい音楽表現は全くとられていない。
と、言うより、彼を評価したブラームスや、ドヴォルザークら国民楽派の作品と共通するような、美しくて耳なじみのよい旋律と躍動的な快活さをためた作品に仕上がっていて、全曲実に聴き心地がよい。
だから、ツェムリンスキーに十二音音階以降のシェーンベルク(義弟でもある)らとの共通性を求めるむきは、ちょっと物足りなさを感じるかもしれないけれど、僕はこのツェムリンスキーの若々しい音楽がとても気に入った。
シャイーとベルリン放送響も、作品の持つ長所を巧く押さえたエネルギッシュな演奏を行っているのではないか。
また、詩篇第23篇も、清新な雰囲気の音楽と演奏でカップリングに相応しい。
25年以上前の録音ということで、いくぶんもやっとした感じはするものの、音楽と演奏を愉しむという意味では問題ないだろう。
これは購入しておいて正解の一枚だった。
ブックオフの中古CDとはいえ、税込み500円とは安い。
2013年01月25日
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