2012年12月30日

山田一雄と旧日本フィルによるチャイコフスキー&プロコフィエフ

☆チャイコフスキー:交響曲第5番&プロコフィエフ:交響曲第7番

 指揮:山田一雄
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団(旧日本フィル)
(1972年1月、1971年1月/アナログ・ステレオ・ライヴ録音)
<タワーレコーズ他>TWCO-1010


 笛吹けど踊らず。
 という言葉があるけれど、今は亡きヤマカズさん、山田一雄の場合は、踊るから笛吹いてくれ、ではなかったのかなあと、最晩年の彼が指揮したいくつかの演奏会のことを思い出しながら、ついつい思ってしまう。
 あまりにミスが多くって、金返せと本気で腹が立った関西フィルとのブラームスの交響曲第1番、オーケストラの機能性とヤマカズさんの新即物主義的音楽づくりがそれなりにフィットした大阪センチュリー交響楽団とのベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」、そして狂喜乱舞の極み、京都市交響楽団とのフランクの交響曲。
 演奏の良し悪しはひとまず置くとして、いずれも「踊る人」山田一雄の面目躍如というべき指揮ぶりだった。
(余談だが、ヤマカズさんと京響のあと、ハインツ・ヴァルベルク指揮ケルンWDR交響楽団でフランクの交響曲の実演に接したことがあったが、ワイマール共和国時代の中道右派のライヒスバンク総裁みたいなヴァルベルクの堅くて硬い音楽づくりは、ちっとも面白くなかった)

 そんな山田一雄の生誕100年を記念して、彼が旧日本フィルを指揮したライヴ音源のCDがタワーレコードからリリースされた。
 今回紹介するのは、1972年1月(詳細不明)に演奏されたチャイコフスキーの交響曲第5番と、1971年1月27日の第213回定期演奏会で演奏されたプロコフィエフの交響曲第7番がカップリングされた一枚だ。

 ヤマカズさんのチャイ5といえば、新星日本交響楽団との晩年のセッション録音が有名だが、60歳前後の指揮者としてもっとも脂の乗り切った時期ということもあってか、このライヴ録音は、きびきびとして流れがよくエネルギッシュな音楽づくりで、とても若々しい。
 現在に比べて個々の技量という点では、管楽器をはじめ精度の低さは否めないが、弦楽器のアンサンブルなど、予想以上にまとまっていることも確かで、フジ・サンケイ・グループによる財団解散とオーケストラ分裂直前の旧日本フィルの水準がよく示されているのではないか。

 一方、プロコフィエフも、チャイコフスキー同様、推進力に富んだ粘らない演奏だけれど、作品の造りもあって、オーケストラのとっちらかった感じが気にならないでもない。

 いずれにしても、山田一雄という日本の洋楽史に大きな足跡を遺した音楽家と、旧日本フィルというオーケストラを記念し記憶するに相応しいCDだと思う。
posted by figarok492na at 16:38| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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