☆テレマン:アリア集
独唱:ドロテー・ミールズ(ソプラノ)
伴奏:ミヒ・ガイック指揮オルフェオ・バロック・オーケストラ
(2011年3月/デジタル・セッション録音)
<ドイツ・ハルモニアムンディ>88697901822
何度か記したことだけれど、僕は声の好みのストライクゾーンがどうにも狭い。
特にソプラノ歌手の場合は、はなはだしくて、正直、プッチーニのヒロインたちのもわもわむわむわした声は苦手だし、ワーグナーのヒロインたちの張り詰めた声も好んで聴きたいとは思わない。
それでは、バロック音楽を得意とする高声のソプラノ歌手ならOKかといえばさにあらず、その人の持つちょっとした声の癖がひっかかって、結局やだなあということになる。
そんな中、当たりも当たり大当たり、直球ど真ん中のソプラノ歌手に出会うことができた。
ドイツ人とウクライナ人を両親に持つドロテー・ミールズがその人だ。
と、言っても、すでに今回紹介するCDと同じドイツ・ハルモニアムンディをはじめ、いくつかのレーベルでその歌声を披歴しているから、デビューしたての新人ルーキーというわけではない。
ただ、無理をして新譜を購入したいと思えるアルバムが、あいにく今までなかったのだ。
それが、とうとうリリースされた。
そう、他の作曲家のオペラのためにテレマンが作曲した、いわゆる挿入アリアを中心にまとめたこの一枚である。
いやあ、それにしてもこのCDはいいな。
クリアでよく響く声質(もしかしたら、録音の「工夫」もあるかもしれないが)は、若い頃のバーバラ・ボニーを思い起こさせるが、ミールズの場合は、ボニーをさらにウエットにしたような、柔らかさリリカルさしっとりとした感じが魅力的だ。
また、そうした彼女の声質に、テレマンの明瞭でよく組み立てられた音楽がぴったりと合っている。
ミヒ・ガイック指揮オルフェオ・バロック・オーケストラは、機能性においては他のピリオド・アンサンブルに大きく勝るとまでは言い難いが、素朴な質感、音色が印象的で、ミールズの歌によく沿っているように思う。
協奏曲のカップリングも含めて、ドイツ・ハルモニアムンディからはヌリア・レアルによる同種のアルバムがリリースされているのだけれど、僕は断然こちらを選ぶ。
歌好き、バロック音楽好きに、大いにお薦めしたい一枚だ。
そうそう、ドイツ・ハルモニアムンディには、ぜひともミールズのハイドンやモーツァルト、ヨハン・クリスティアン・バッハらのアリア集や歌曲集を録音してもらいたいものである。
声のピークというのは、本当に短いものだから。
2012年12月30日
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