☆ワーグナー:管弦楽曲集
指揮:ヴァーノン・ハンドリー
管弦楽:ロイヤル・フィル
(1993年10月/デジタル・セッション録音)
<Tring>TRP008
今ではどう言うのかな。
かつては駅売CDと言ったはずだけど、駅の構内にあるショップや書店のCDコーナーに、1枚500円から1000円あたりのクラシック音楽のCDが棚一列か二列程度並べられていたと思う。
あなた、サントメプリンシペ祝祭管弦楽団やスケベニンゲン・フィルといったついぞ耳にしたことのない名前のオーケストラが演奏した名曲集に、こなた、フルトヴェングラーやカラヤン、ワルター、トスカニーニが指揮したモノラル時代の名録音と、その内容は千差万別だが、前者は偽名、後者は板おこし(版権の切れた音源のLPレコードを再生録音しCD化したもの)と、いずれも出所不明の怪しげなCDがその多くを占めていた。
そうした駅売CDの中に、録音はデジタル録音、しかもオーケストラはイギリスの名門ロイヤル・フィル、当たり外れがあるとはいえ演奏自体もけっこういけている、ロイヤル・フィルハーモニー・コレクションというシリーズがある(あった)。
実はこれ、もともとTringという海外のレーベルがロイヤル・フィルと精力的に進めていた一連の録音の一部を、KEEPという国内の業者が買い取って、手を変え品を変え販売していたものなのだけれど、今回紹介するワーグナーの管弦楽曲集は、そのTringレーベルがリリースした初出盤。
ちなみに、KEEPのロイヤル・フィルハーモニー・コレクションにも堂々加えられている(いた)。
で、第1曲目のワルキューレの騎行(『地獄の黙示録』でおなじみの曲)から、ブラス・セクションの鳴り具合のよさに舌を巻く。
続く、『リエンツィ』序曲、『ローエングリン』第3幕への前奏曲、『さまよえるオランダ人』序曲、『タンホイザー』序曲、いずれをとっても金管群は好調で、まずもってこのアルバムの聴きどころは、ロイヤル・フィルのブラス・セクションだと強く思った。
加えて、先年亡くなったイギリスの名匠ヴァーノン・ハンドリーの、見通しがよくて粘らないまとまりのよい音楽づくりにも好感が持てる。
重くてねっとりとしたワーグナーを好まれる、いわゆるワグネリアンの方々には、相当物足りない演奏かもしれないが、この軽やかなワーグナーは何度聴いても聴き飽きない。
(その意味でも、このアルバムのカップリングは正解だろう)
ジークフリート牧歌など、細かく聴けば粗さを感じる部分もなくはないが、弦に木管ともに達者な演奏だし、若干ざらつきはあるものの録音もクリアだ。
これは購入して本当によかった一枚。
ブックオフで中古が250円とは安過ぎる。
上述したKEEPなら新品が税込み315円で手に入る(った)し、輸入盤もSACD等が廉価で発売されている。
なお、ブックオフだとKEEPの中古が500円で出たりしているので、注意が必要だ。
2012年12月17日
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