2012年12月09日

努力クラブ5『旅行者感覚の欠落』

☆努力クラブ5『旅行者感覚の欠落』

 脚本・演出:合田団地
(2012年12月8日19時開演の回/元立誠小学校 音楽室)


 フジテレビ系列のプロ野球ニュースで、球界の福田赳夫よろしく飄々然と解説を披歴していた関根潤三だが、彼がヤクルトの監督を退任してすぐに『一勝二敗の勝者論』なる著書を刊行したときは、いくらなんでもそのタイトルはないやろと唖然としたものだ。
 人生たった三回の勝負で一勝二敗というのであれば、そらちょっとかっこよさげに聴こえないでもないが、いかんせん関根さんはチームを率いリーグを通じて勝負に挑み続けねばならぬプロ野球の監督なのである。
 一勝二敗のペースを続けていけば、50勝100敗、100勝200敗、500勝1000敗…。
 いや、1000敗する前に監督をクビになるか。
(ああ、なるほどとけっこう納得する内容ではあったんだけど、それでも「一勝二敗」という書名はなあ…)

 そんな関根潤三の監督時代に投手コーチを外れていたのが、ヤクルト生え抜きのピッチャー、安田猛だ。
 僕らの世代であれば、いしいひさいちの『がんばれ!!タブチくん!!』で主人公のタブチくん同様、徹底的にからかわれていたヤスダ投手を思い出す人も少なくないだろう。
 左サイドスローから繰り出すとてもゆるやかなボールや数々の変化球でこつこつ勝利を重ねていたピッチャーである。
 この安田猛にあやかりたいとかつて合田団地は口にしていたが、彼が作演を務める努力クラブにとって5回目の本公演となる『旅行者感覚の欠落』(いつもながら、タイトルがいいやね)も、そうした合田君の曲者ぶりがよく表わされていた。

 月曜日まで公演が残っていることもあって詳しい内容については触れないが、『旅行者感覚の欠落』は、過剰過激な表現にだれ場退屈場と作品の振り幅の大きさも厭わず、様々な演劇的手法や笑いの手法を織り込みながら、自らの表現のあり様を示した作品となっていたのではないか。
 努力クラブの旗揚げ公演『魂のようなラクダ、の背中に乗って』を思い起こさせる結構筋運びでもあったのだけれど、リリカルな部分の見せようも含めて、球の曲がり具合や緩さにしっかり磨きがかかっているように感じられた。
 だからこそ一方で、配球の組み立ての苦しさ難しさを感じたことも事実で、あえて「見せ球」としてではなく、本気の超速球主体の勝負を挑んでみてもよいのではないかと思わないでもなかった。
 合田君の美学美意識に反するだろうことは承知の上でだけれど。

 演者陣は、喜撃名詞(やりよった!気になるシーンあり!)と無農薬亭農薬という新たに加わった二人と、おなじみ合田君、佐々木峻一の努力クラブメンバーや、盟友の丸山交通公園、常連のキタノ万里、九鬼そねみ(奮戦)、長坂ひかる(前回の『よく降る』の変な人より、今回のウェットな感じの役柄が合っている)のほか、新谷大輝、玉一祐樹美、木下ノコシが出演していて、各々の特性を発揮していた。
 一発狙いからセーフティーバント、さらには隠し球といった合田君の貪欲な要求に、万全とまでは言えないながら、皆々応える努力を重ねていたと思う。
 中でも、木下ノコシのこれ見よがしでない着実なヒットぶりに注目した。
(彼女に関しては、ホームチーム・サワガレの『顔の底』でのフラットな感じにも好感を抱いたんだった)

 加えて、稲森明日香による過不足ない衣装のセンスのよさが印象に残った。

 いずれにしても、合田団地が関根潤三ではないということがよくわかる作品であり公演だった。
 次回の試合、じゃない公演にも大いに期待したい。
posted by figarok492na at 00:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック