☆fukuii企画『ニホンの狂育 −女子校編−』
脚本・演出:福井俊哉
(2012年5月30日、アトリエ劇研)
京都造形芸大映画学科出身のインディーズレーベル・月世界旅行社は好漢ぞろいだが、演じてよし撮ってよし(キャメラマン)、おまけに歌まで歌ってよしのふじもん藤本啓太監督は好漢中の好漢だ。
その藤本監督の『モカ珈琲』や『ゆびきりげんまん』で、根は優しくてちょっとシャイな主人公を演じている福井俊哉が、京都学生演劇祭のドキドキぼーいずの公演で頭を金髪に染めているばかりか、けっこうぷっくりとしたお腹をさらしているのを観たときは、えっと我が目を疑ったものだ。
あの福井君はいったいどこへ!?
てなことを、別の場所で劇団テンケテンケテンケテンケの勝二繁に話していると、「福井君、てんこもり堂に出てたじゃないですか」とすかさず応えがあった。
そうだそうだ、福井君、てんこもり堂の『ESCAPE』で若い銀行員の一人として頑張っていたんだ。
どうりでふじもんの作品を観たときにあれっと思ったんだよね。
そういえば、ちょっとだけ福井君と話しをする機会があった際、自分は舞台のほうで作演もやっているって言ってたっけ。
そんな福井俊哉率いるfukuii企画の二回目の公演(学外では初めての公演)となる『ニホンの狂育 −女子校編−』を昨夜アトリエ劇研で観た。
福井君の想いは別にして、続篇なきしも非ずと感じたりもしたから詳しい内容については触れないが、陰湿ないじめはびこる女子高聖ブリリアント女学院は二年すもも組にキタノ拳死郎なる「男子」が転校してきて…、といった具合に物語は進んでいくのだけれど、はっちゃけはちゃめちゃな展開の中に、福井君の真っ正直な想いやメッセージ(師の川村毅にもつながる)が盛りだくさんに盛り込まれていて、まずもって好漢、ではない好感を覚えた。
また、ダンスやラップなど流行り(演劇的にも)の要素を巧く取り入れるなど、お客さんを愉しませようという仕掛けも充分理解がいった。
テキストの構成や登場人物の感情の変化、舞台美術等々でさらに細やかさ、丁寧さ、丹念さが加われば、作品の持つメタフィクション的な要素というか、確信犯的な部分がよりはっきりと表われたのではないかと、その点を残念に思う。
それか、逆に粗さを粗さとして、もっと振り切ってしまってもいいのではないか。
続篇を期待するのもそのことと関係していて、今のままでも続きをやるのは可能だし、なんなら『悪名』や『男たちの挽歌』の「あれ」を使ってもいい。
いや、そうなるとただの邪劇になってしまいかねず、福井君の目論見想いとは大いにかけ離れてしまうか…。
福井君の高揚ぶりとタイトルの「狂」を体現したかのような、拳死郎役の上川周作や教師役の北川大佑のほか、ドキドキぼーいずの吉田穂、造形芸大映画学科の映画でおなじみ仙洞田志織、跡見賢太、きのせまさきと、演者陣も各々の個性特性をよく発揮していたのではないか。
ただ、激しい感情表現と技術面での齟齬からくるライヴ特有の傷よりも、表面的な巧さと内面における役柄との距離からくる隙間のほうが気になったりしなくもなかったが。
現時点での技術的な巧拙は置くとして、個人的には田中沙依が強く印象に残った。
彼女の今後の活躍に期待したい。
いずれにしても、福井俊哉がこれからどのような作品を仕掛けてくるがとても愉しみだ。
次回の公演を心待ちにしたい。
2012年05月31日
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