2012年03月10日

象牙の空港♯1『トブトリ、トレナイカ』

☆象牙の空港♯1(旗揚げ公演)『トブトリ、トレナイカ』

 脚本・演出:伊藤元晴
(2012年3月10日、思文閣美術館地下一階CAVE)


 言論活動の自由が極端に制限された戦時下、弁護士正木ひろしは、個人誌『近きより』を刊行し続けた。
 自らの近いところから(近いところだけでも)思想信条の自由を護り、圧倒的な軍国主義体制への抵抗を続けようという意志が明確に示された内容で、僕の個人創作誌『赤い猫』の目標の一つにもなっているのだけれど、伊藤元晴脚本・演出による象牙の空港の旗揚げ公演『トブトリ、トレナイカ』を観ながら、ふとその『近きより』のことを思い出した。

 と、言っても『近きより』と違って『トブトリ、トレナイカ』の場合は、世の諸々の事ども(例えば、橋下徹のこととか)をあからさまにからかったり、鋭く攻撃しているわけではない。
 と、言うより、『トブトリ、トレナイカ』は、伊藤君の嗜好や思考、志向や試行のアマルガムというか、あえて詳しくは記さないけれど、彼がこれまで接して刺激や影響を受けてきたお芝居や映画、文章等々を咀嚼して再構成したもので、知的な言葉遊びにシュール展開は、もしかしたら大きく好みを分けるかもしれない。
 正直、僕自身、好みに合わない表現やのれない部分もあったのだが、伊藤君が自分自身のやりたいと思うことをやりきろうとし、観せたいと思うことを観せきろうとしている点には好感を覚えたし、それより何より、この『トブトリ、トレナイカ』が表現活動そのものへの伊藤君の痛切な意志表示であることに対して充分納得がいった。

 技術的な長短や個性特性の違いはありつつも、演者陣は伊藤君の意図に沿う努力を重ねていたのではないだろうか。

 いずれにしても、次回以降の公演も愉しみにしたい。

 そうそう、終盤の大切な場面で、ブルックナーの交響曲第2番の第1楽章が使われていたのだが、僕はこの曲がとても大好きなため、ついつい音楽のほうに意識がいってしまった。
 たぶん大切な場面だからこそ、あまり有名でないこの曲が使われていたのだろうが。
posted by figarok492na at 19:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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