2012年02月09日

東京上空いらっしゃいませ

☆東京上空いらっしゃいませ
<1990年、ディレクターズカンパニー・松竹第一興業・バンダイ他>

 監督:相米慎二
 脚本:榎祐平
(2012年2月8日、京都文化博物館フィルムシアター)


 長崎にいた頃からそのきらいはあったものの、大学に入って京都で一人暮らしを始めて決定的となったのが、宵っ張りの夜型生活だ。
 で、CD、ラジオを聴きながら細々と作業を進める癖がつき、結局現在のぶらりひょうたん的な人生へと到っているのだが、まさか学生時代には自分がこんな生き方をするようになるとはついぞ思ってもみなかった。
 まあ、それはそれ。
 今では完全にテレビとおさらばしてしまったけれど、学生の時分など喜んで深夜番組を観たものである。
 市川雷蔵の眠狂四郎にはまったのも、確か読売テレビの深夜枠の映画放映がきっかけではなかったか。
 あと、同じ読売テレビでは、生瀬勝久や古田新太、升毅、牧野エミ、羽野晶紀、立原啓裕、山西惇らが出演した『ムイミダス』など一連の番組や、上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶の『鶴瓶上岡パペポTV』は、ほぼ毎週欠かさず愉しんでいた。
 そういえば、笑福亭鶴瓶が結果として主人公を死に追いやる悪い奴と死神の二役を演じた相米慎二監督の『東京上空いらっしゃいませ』について鶴瓶自身がおなじみのおもろおかしい口調で話すのに対し、上岡さんが鋭い突っ込みを入れていたことがあったような…。
 などと思いながら、今夜京都文化博物館のフィルムシアターでその『東京上空いらっしゃいませ』を観ていたら、なんのことはない、作品の中で上岡さんと鶴瓶のおしゃべりが音声だけだけどしっかり聞こえてきた。

 と、こう書けばわかるように、『東京上空いらっしゃいませ』をきちんと観るのは、今夜が初めてである。
 いや、同じ相米慎二監督の『台風クラブ』にあてられて、この作品に出演されていた伊達三郎さんのお宅の電話番号にお電話をかけ、「そんなけったいな人おりません」という女性の冷ややかな声に肝を潰した経験もあるくらいの人間だもの、この『東京上空いらっしゃいませ』も一度レンタルビデオで観ようとしたことはあった。
 ところがどっこい、このビデオがとんだ喰わせもので、観始めたとたんグルギャルグルギャルと汚い画像になってあじゃぱー、別の貸しビデオ屋を探してもこれまたなし、もうええわ観んでええ、と断念して以来、ずっと観そびれたままだった。

 そんな『東京上空いらっしゃいませ』だが、いろいろ気になる部分や突っ込みどころ(一つには、バブル時代の作品ということもある。基本的にバブル肯定の作品ではないとはいえ)はなくもないのだけれど、個人的には観ておいてよかったというのが正直な感想だ。
 相米監督というと、どうしても長回しということになって、この作品でもやってるやってると改めて感心し、ハンバーガーショップでバイトを始めたヒロインの牧瀬里穂が何人もの注文を一人でこなそうとしておたおた無茶働きをするシーンでは、これってセルフパロディかいとすら思えて、ついつい笑ってしまったほどである。
 ただ、僕が観ておいてよかったなあと思ったのは、一度死んでしまったヒロインが生き返ることで、生きるということや自分自身について考えるという展開と、牧瀬里穂(どことなく多部未華子に似ている)の初々しい姿が巧く重なり合っていたように感じられたからだ。
 相米監督の演出もあってだが、特に後半の彼女の表情は本当に魅力的だった。

 そうした牧瀬里穂演じるヒロインを支える、と言うより彼女によって目醒めさせられるのが中井貴一(父親の佐田啓二を思い出させる場面が何度かあって、はっとする)。
 二枚目半という役回りは、もしかしたら、アメリカのスクリューボールコメディーを意識してのものかもしれない。
 また、上述した笑福亭鶴瓶は悪役敵役での演技は「おいおい」という出来だが、関西弁丸出しの死神(コオロギ)役は実に柄に合っている。
 山田洋次が気に入ったのも無理はない。
 ほかに、毬谷知子、三浦友和、藤村俊二(まだ枯れていない)、竹田高利、出門英、谷啓、河内桃子らも出演。

 それにしても、『東京上空いらっしゃいませ』が公開されてからの約22年という時の流れをどうしても考えてしまう。
 ディレクターズカンパニーは崩壊し、相米監督をはじめ、出門英(公開直後に死亡)、河内桃子、谷啓が亡くなった。
 そして、『パペポTV』も終わり、上岡龍太郎も引退した。
 そんな中、中井貴一が予想していたほどに変わってはいないように思えるのは、彼が今も若いというより、この頃すでに老成していたからではないか。
posted by figarok492na at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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