2012年02月01日

フェスカの交響曲第1番他

☆フェスカ:交響曲第1番他

 指揮:フランク・ベールマン
管弦楽:ハノーヴァーNDRフィル
(2002年2月、3月/デジタル・セッション録音)
<CPO>999 889-2


 昔、『知ってるつもり』というテレビ番組があったが、名前だけは知っているものの、改めて考えてみると、はていったいどんな人だっけと悩んでしまうことがままある。
 さしずめ、CPOレーベルを中心に、近年その作品のCD録音が少しずつ増えているフリードリヒ・エルンスト・フェスカという作曲家など、その最たるものだろう。
 HMVのサイトなどで、交響曲や室内楽曲の新譜がリリースされたことを目にしているから、フェスカの名前はずいぶん前から知っていて、ああフェスカね、などと「知ってるつもり」でいたのだけれど、実際どんな音楽の書き手なのかと問われたら、これが全く答えようがない。
 新年のJEUGIA三条本店の輸入盤半額のセールのワゴンで、今回取り上げる1枚を見つけて購入し、ようやくフェスカという人物が1789年(フランス大革命の年だ)に生まれ、ドイツ諸邦でヴァイオリニストとしても活躍し、1826年に30台の若さで亡くなったドイツの作曲家ということを知った。

 ほぼ、ベートーヴェンやウェーバー、シューベルトと同時代の作曲家ということで、その音楽も古典派から初期ロマン派のとば口に足を踏み入れかけた、といった内容となっている。
 まず、1810年から11年頃に作曲されたと考えられ、12年に初演された交響曲第1番変ホ長調作品番号6は、古典派の様式に則った四楽章形式の交響曲。
 ブックレットの解説にも記してあるが、第1楽章には同じ調性であるモーツァルトの交響曲第39番第1楽章とそっくりなテーマが登場する。
 加えて、これまた同じ調性のハイドンの交響曲第91番の第1楽章も想起させるなど、どこかで耳にしたことがあるような既視感、ならぬ既聴感は否めないが、構成的な破綻もなく、躍動感も兼ね備えていて、聴き心地のよい交響曲に仕上がっているとは思う。
 続く、作品番号41のニ長調、作品番号43のハ長調の二つの序曲も、明朗で快活な音楽で、それこそコンサートの開幕の序曲としてプログラミングされても全くおかしくないのではないか。
 後者の序曲では、ベートーヴェンの交響曲第5番とつながるようなダダダダンという音型が何度も登場するのが面白い。
 1822年に作曲された歌劇『オマールとイリア』の序曲は、冒頭のものものしい曲調がオリエンタル調であるとともに、まさしく初期ロマン派的で、もしもフェスカが長生きしていれば、いったいどのような作風に変化しただろうかと大いに興味が湧く。
 途中、モーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』の「地獄落ち」を思わせる旋律も表われるが、華々しく堂々たる終曲で、これまた非常に聴きやすい音楽だ。

 フランク・ベールマン指揮ハノーヴァーNDRフィルは、音楽を知るという意味でも、音楽を愉しむという意味でもあまり不満を感じさせない。
 少し粗さを覚えないでもないが、ソロ、アンサンブル、ともに満足のいく演奏である。

 「知ってるつもり」の人はもちろん、フェスカを知らない人にもお薦めしたい。
posted by figarok492na at 15:59| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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