2011年11月25日

ジンマン&チューリヒ・トーンハレ管弦楽団による未完成交響曲他

☆シューベルト:交響曲第7(8)番「未完成」他

 指揮:デヴィッド・ジンマン
 独奏:アンドレアス・ヤンケ
管弦楽:チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
(録音:2011年5月、9月/デジタル、セッション)

<RCA>88697953352


 わが恋の成らざるが如く、この曲もまた未完成なり。
 というウィリー・フォルスト監督の『未完成交響楽』の記憶が尾を引いて、などと言えば大げさに過ぎるかもしれないが、つい30年ほど前までは、この国でのシューベルトの未完成交響曲の人気は非常に高かった。
 中でも、ベートーヴェンの運命交響曲とのカップリングなど、LPレコードの定番の一つとなっていたほどだ。
 僕自身、高校生活三年間のうちに、カール・シューリヒト指揮ウィーン・フィル、アンドレ・クリュイタンス指揮ベルリン・フィル、マルコム・サージェント指揮ロイヤル・フィル、ヨーゼフ・クリップス指揮ウィーン音楽祭管弦楽団、ペーター・シュヴァルツ指揮東京フィルと、5種類の未完成交響曲のレコードを手に入れて、とっかえひっかえ愛聴していたんだっけ。

 それがCD化が進み、いつの間にか第8番から第7番へと番号が呼び改められる中で、未完成交響曲の人気はずいぶん陰りを見せるようになった。
 いや、今だってコンサートではよく演奏されているし、CD録音だってコンスタントに続いている、
 しかしながら、第1番から第6番の交響曲がLP時代に比べて相当身近な存在に変わった分、シューベルトの交響曲は何がなくとも未完成交響曲という状況ではなくなってきたこともまた大きな事実だろう。

 そんな中、もともと第1番と第2番のカップリングとアナウンスされていた、デヴィッド・ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管弦楽団によるシューベルトの交響曲全集のリリース第一段が未完成交響曲他に変更されたと知ったとき、僕はちょっとだけ驚いた。
 そうか、売れ筋を考えるならば、未だに未完成交響曲を優先させるのだなあと。


 まあ、それはそれとして、ジンマン&チューリヒ・トーンハレ管弦楽団が演奏した交響曲第7(8)番「未完成」は、確かに彼彼女らのシューベルトの交響曲全集の劈頭を飾るに相応しい充実した内容となっているように、僕には感じられた。
 ジンマンらしくピリオド・スタイルを援用した速いテンポのきびきびした造形は予想通りだったし、第2楽章での管楽器のソロなど、これまたジンマンらしい音楽的な仕掛けにも不足していない。
 ただし、そうした点はそうした点として愉しみつつも、僕はシューベルトの内面の嵐が張り裂け出たような激しく、厳しい(録音の加減もあってか、ときに塩辛くも聴こえる)表現により心を魅かれた。
 特に、第1楽章のこれでもかと叩きつけるような強音の連続が強く印象に残った。

 一方、カップリングの独奏ヴァイオリンと管楽器のためのロンド、ポロネーズ、コンツェルトシュトゥックは、アンドレアス・ヤンケの清潔感があって伸びやかなソロもあって、交響曲との間によいコントラストを生んでいるように思う。


 いずれにしても、ジンマン&チューリヒ・トーンハレ管弦楽団によるシューベルトの交響曲全集の完成が待ち遠しい。
posted by figarok492na at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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