☆テレマン:オペラ・アリア集
独唱:ヌリア・リアル(ソプラノ)
独奏:ユリア・シュレーダー(ヴァイオリン)
管弦楽:バーゼル室内管弦楽団
録音:2010年10月、デジタル/セッション
(ただし、トラック14、15のみ2011年1月ライヴ録音)
<ドイツ・ハルモニアムンディ>88697922562
あれは高校に入ってすぐの頃のことだから、もう25年以上も前のことになるか。
FMから流れてくる、ニコラウス・アーノンクール指揮コンツェントゥス・ムジクス・ウィーンが演奏したモーツァルトのレクイエムを聴いて、僕はなんとも言えない不可思議な感情にとらわれた。
なんじゃこの針金を擦り合せたみたいな弦楽器の音は、それに管楽器だって鼻の詰まったような粗汚い音だし。
そう、いわゆるピリオド楽器による演奏を初めて耳にして、僕はアーノンクールの解釈云々かんぬんよりも前に、モダン楽器とのあまりの音色の違いに度肝を抜かれてしまったのだ。
で、それからだいぶん時が経ち、慣れとはおそろしいもの(?)で、今ではピリオド楽器による演奏もピリオド・スタイルによる演奏も当たり前、バロック期はもとより、古典派、初期ロマン派ですらピリオド・スタイルじゃないとしっくりこないなあ、といった感覚の持ち主になってしまった。
そんな人間からすれば、今回取り上げるソプラノのヌリア・リアルがヴァイオリンのユリア・シュレーダー率いるバーゼル室内管弦楽団(ピリオド、モダン、両刀使いのオーケストラだが、このアルバムではピリオド楽器を使用)の伴奏で歌ったテレマンのオペラ・アリア集は、それこそ好みのど真ん中、どストライクということになるのではないか。
と、言うと、残念ながらこれが、そういうわけにもいかない。
いや、CDの出来自体は、大いに推薦するに値する。
しばしば職人芸と呼ばれるテレマンの音楽だが、このアルバムで選ばれた作品も、そうした彼の腕達者ぶりが充分に示されたものばかりだ。
同時代のバッハの厳粛さやヘンデルの華美華麗さには及ばないものの、その分聴き手の心をくすぐる快活さ、聴き心地のよさに満ちている。
そうしたテレマンの音楽を、透明感があって清潔感あふれたリアルと、歯切れがよくてしっかりとまとまったバーゼル室内管弦楽のアンサンブルが丁寧に再現していく。
(そうそう、楷書の技とでも呼ぶべきシュレーダー独奏によるヴァイオリン協奏曲2曲もこのCDの聴きものの一つだろう)
まさしく、今現在のピリオド楽器による演奏、ピリオド・スタイルによる演奏の成果と評するに足る一枚と言えるのではないか。
ただね、哀しいかな僕の声のストライクゾーンは異様なほどに狭いのである。
そう、リアルの声や歌い口のちょっとした癖が、どうしても気にかかってしまうのだ。
もうこれは、自分の頑なさを恨むしかあるまい。
いやはや、なんともはや。
2011年11月14日
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