☆チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」、『くるみ割り人形』組曲
指揮:クラウディオ・アバド
管弦楽:シカゴ交響楽団
録音:1991年3月(デジタル/セッション)
<SONY>SK48056
チャイコフスキーの交響曲といえば、どうしても第4番、第5番、第6番「悲愴」という三つの作品を挙げざるをえまい。
美しい旋律に劇的効果、管弦楽技法の妙と、いずれをとっても「名曲」と呼ばれるに相応しい充実した内容となっている。
そうした後期の三つの交響曲に比べると若干分が悪いとはいえ、第1番から第3番(他にマンフレッド交響曲もあるが)の初期の三つの交響曲もなかなかどうして、捨て難い魅力が潜んでいるのではないか。
特に、チャイコフスキーにとっては初めての交響曲となる第1番「冬の日の幻想」は、ロシア民謡を想起させる伸びやかなメロディや、ときに前のめり感はあるものの、若書きだからこその清々しい突進力にあふれている。
当然肌理の粗さや密度の薄さを感じる部分もないではないが、個人的にはかえってそれが、左右両隣が空いた映画館で映画を観ているようなリラックスした気分につながっていて嬉しい。
アバドとシカゴ交響楽団にはところどころ粗さや、逆に喰い足りなさを覚えたりもするのだけれど、作品の全体像を識るという意味では適切な演奏を行っていると思う。
小気味よくってチャーミングな小序曲に始まって、華麗な花のワルツでフィナーレを迎える『くるみ割り人形』組曲は、チャイコフスキーという作曲家の魅力特性が十二分に発揮された作品。
隅から隅まで目配りの届いた、さらなる名演を期待したくもあるが、CDで繰り返し聴くということを考えれば基本的にお薦めできる演奏だろう。
2011年10月14日
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