2011年08月22日

京都クリエイションWS2011発表公演

 のぞきもしないで、青い青いとあこがれるのは困りものだが、隣の芝生の茂り具合、手入れの具合には目もやらず、俺の芝生は日ノ本一よ、いやさ世界一宇宙一あはははは、と唯我独尊俺流を決め込むのも困りものだ。
 まして、表現芸術の世界になんらかの形で身を置く者であれば、隣の芝生にもしっかり目をやって切磋琢磨に努めることがやはり大切だろう。
 で、その伝でいけば、shelfの矢野靖人さん、重力/Noteの鹿島将介さん、冨士山アネットの長谷川寧さんと、東京の3つのカンパニーの代表者(演出家)を招き、公募で決定した参加者とともに、4日間という限られた時間のみの稽古で20分前後の作品を造り上げるという、『京都クリエイションWS2011』(アトリエ劇研主催)など、まさしく隣の芝生の造形者と直接触れ合うことのできる、非常に刺激的な企画だったのではないだろうか。
 アトリエ劇研で21日に開かれた、その成果発表の公演(18時半からの回を観劇)を観ながら、僕はそうしたことを強く感じた。

 発表公演は、A、B、C、のコース順に行われたが、矢野さんの構成・演出(川渕優子さんアシスタント)によるAコースは、11月に上演予定のイプセンの『幽霊』(のテキスト)を利用した作品。
 台詞の部分では、参加者と翻訳戯曲・古典との距離などをどうしても感じてしまったが(そうした課題が明確になることも、今回のワークショップの大きなメリットの一つだろう)、彼女彼らが舞台に登場した冒頭や、無言で動いたり静止したりする部分での身体性には、shelfの公演で示されていたそれと重なり合うものを強く感じ、参加者の努力と矢野さん(や川渕さん)の適確な指導に大いに感心した。
 また、暗と明の照明の効果的な使い方も強く印象に残った。
 11月の公演が非常に待ち遠しい。

 続くBコースは、鹿島さん構成・演出(平井光子さんアシスタント)による作品。
 スピーカーから聴こえてくるイェリネクの『雲。家。』(イェリネクの名から、鹿島さんのトリコ・Aの『クリスチネ』に対する評価をふと思い出す)と、一見無関係に思われる演者陣の言葉や動作が徐々に交差をはじめ、一つに結び付いていくあり様に、個人的には面白さを覚えた。
 演者陣も、個々の差は感じられつつも、現代演劇の様々な技法手法を積極的に吸収咀嚼する鹿島さんのスタイルによく沿っていたのではないだろうか。
 できれば、今度は重力/Noteの長尺の作品に接してみたい。

 ラストは、長谷川寧さんの構成・演出・振付によるCコース。
 いわゆる体育会系には見えないスマートで洗練された作品なのだけど、その実、演者陣の肉体的な駆使疲労の度合いはまさしく体育会そのものではなかったか。
(折り畳み机を4段ほどに高く積み上げて、前方の脚を折り曲げて傾斜をつくり、手すりもなしにそこから滑り降りるなんて芸当は、心得のある帰山玲子さんだからできたことだろう。それでもけっこうひやっとしたが)
 参加者の持ち寄った「悪夢」がテーマになっていて、それが今現在の諸々とどこかでつながっているように感じられた点も、僕には面白かった。
(そうそう、ある演者さんの悪夢に一人大笑いしてしまったのだ。詳述はしないけれど、ああやっぱりなあ、と自分の中でいろいろなことがつながってしまってこらえられなかったのである)

 あと、ダンスがベースにある長谷川さん(冨士山アネット)はもちろんだが、ABC全てのコースの作品において、舞台上での身体性のあり方について考えさせられたこと。
 演技者には音楽性(と、言ってもブレヒトヴァイル流のそれではなく、もっと根源的な意味で)が必要とされることを痛感したこと。
 を、付け加えておきたい。

 いずれにしても、刺激を受けるところ得るところ大な公演だった。
 ああ、面白かった!

 「で、隣の芝生は青いのか?」、と呼ぶ声あり。
 それより何より、自分の芝生を青くしましょうよ!
posted by figarok492na at 03:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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