末長敬司より、昨日末長宅で、キノ・フォーラムkyoの上映会が無事執り行われた旨、報告があった。
今回は、夏恒例ホラー傑作選(番外編)/アジアン・ホラー編集として、リンゴ・ラム監督の『ヴィクティム』(未公開、1999年・香港)とロイ・チョウ監督の『殺人犯』(2009年・香港)の二作品が上映され、
まず、『ヴィクティム』については、
ホラー的導入部からいつの間にか映画のジャンル自体が二転三転していく、というスタイルはアメリカ映画(『ゲーム』(97年・米)等)に多く、監督の林嶺東(リンゴ・ラム)がハリウッドから一時帰国していた時期に作ったこと、カメラマンにアメリカ人のロス・W・クラークソンを起用したことも影響しているのではないか。
世の風紀が乱れるとホラーが流行るのは倫理的危機感の現れで、この『ヴィクティム』が制作された1999年には大陸人の流入による犯罪の急激な増加があり、大衆の金銭・株式への執着など(ニュース映像がさりげなく挿入される)、当時の香港の世相が反映されているのではないか 。
という点が、
また、『殺人犯』については、
連続猟奇殺人犯を追う刑事が自力では犯人に辿り着けず、後半、全くノーマークだった意外過ぎる人物が犯人だと名乗り出て主人公を試す、所謂『セブン』(95年・米)タイプのサイコ・ホラーで、監督・脚本の周顯揚(ロイ・チョウ)が若く、アメリカ映画の影響が大きく、またアメリカが出資(ユニヴァーサル・スタジオ)していることも大きいのではないか。
ハリウッドで活躍する名プロデューサー・江志強(ビル・コン)や、監督・脚本の周顯揚(ロイ・チョウ)が若いこともあり、カメラマンに侯孝賢(ホウ・シャオシェン)作品で有名な李屏賓(マーク・リー・ピンビン)、音楽に日本人の梅林茂を配すなど超一流スタッフで脇を固めて万全を期していること。
真犯人の背景を語る上で「東南アジア」が重要なキーになっており、香港が「東南アジア」の最北端に位置している、決して無関係な場所では無いことを強調するため、緑と黄色の強い「亜熱帯な空気」を李屏賓(マーク・リー・ピンビン)が意識して撮影していたこと。
固定イメージの強い個性派俳優を脇に配した所謂、配役を使ったミス・リードが仕掛けられていた事。
「香港四天王」と呼ばれる国民的アイドルの一人である郭富城(アーロン・クォック)を主演に、こうした危ない内容の作品をメジャー・ピクチャーとして新人監督が作れてしまう、香港映画界の懐の深さと日本のテレビ局映画のヒドさの哀しい対比。
という点が、それぞれ末長から解説されたとのことである。
いずれにしても、盛況のうちに会が終了したとのことで、本当に何よりだ。
2011年08月09日
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