2010年09月22日

『ミックマック』

 ジャン・ピエール・ジュネといえば、まずは『アメリ』ということになるのだろうけれど、個人的にはどうしても『デリカテッセン』を挙げたくなる。
 と、言うのも、核戦争後、人間が人間を食べるという、それだけ聴けばおぞましさ全開の世界を舞台にしながらも、機智と希望を武器に「人生それでも捨てたものではないさ」と小気味よく、ただしところどころグロテスクでシュールな映像も交えながら全篇描き切ったジュネの手腕に、僕は強く心を奪われたからだ。
(当然、共同監督のマルク・キャロの存在も忘れてはならないだろうが)

 で、そんなジャン・ピエール・ジュネの新作『ミックマック MICMACS A TIRE-LARIGOT』が公開されたので、迷わず京都シネマまで観に行って来た。
(そうそう、『デリカテッセン』で主人公を張ったドミニク・ピノンが、ここでも魅力あふれる役柄を演じている)

 現在公開中ということもあって、いつもの如く詳しい内容については触れないが、全てはタイトルのミックマック(いたずら)に尽きるのではないか。

 父を地雷で奪われ、自らも頭の中に流れ弾が残ったままの主人公バジルが、父を殺し、自分自身を傷つけた二つの兵器製造企業(軍需産業)に復讐を挑むというストーリー展開で、一つ間違うと、黒澤明の『悪い奴ほどよく眠る』のような重たくて救いのない内容になってしまうのだけれど、そこはジャン・ピエール・ジュネ。
 お得意のファンタジー・タッチを駆使しつつ、徹頭徹尾笑いを忘れず、バジルと仲間たちの戦いを軽やかに描いていく。
(黒澤明でいえば、企業の対立の構図などからもう一つ有名な作品を思い出すのだが、あちらがあくまでも個人の力を信じているのだとすれば、こちらは集団の力、その友情と愛情を信じているのだと評することができるのではないか。ただし、ジュネは、黒澤明の作品ではなく、フランコ・レオーネの作品のほうに影響を受けているようだが)

 表現のテンポのよさはもちろんのこと、痛烈な諷刺と細かい仕掛けやくすぐり(例えば、サルコジ大統領の写真!)、映画ならではの「遊び」(例えば、タイトルやテーマ音楽!)も豊かだし、音楽の使い方も非常に効果的だ。

 また、主人公を演じるダニー・ブーンをはじめ、役者陣も実に達者で個性に富んでおり、観ていて本当に嬉しくなってくる。

 難しいことを柔らかく、かつ面白く暖かく描こうという創り手の姿勢(それは、『デリカテッセン』とも共通している)も含めて、大いに満足のいった作品。
 映画好きにはぜひともお薦めしたい。
 ああ、面白かった!
posted by figarok492na at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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