2009年12月12日

ある官僚の死

 京都シネマで、今日からキューバ映画祭2009が始まるということで、いろいろ思案した末、結局当初のチョイス通り、キューバを代表する映画監督、トーマス・グティエレス・アレアの1966年の作品、『ある官僚の死』(La Muerte de Un Brocrata)を観に行くことにした。

 『ある官僚の死』が、ついつい叔父の亡骸とともに棺の中に入れてしまった故人の労働証を、甥が年金取得のために取り戻そうとするが、墓地に戻れば剣もほろろの対応で、役所に行ったらたらい回し、と疲弊に疲弊を重ねるばかり、思い余ってついには…、という展開で、官僚主義の弊害をときにスラプスティックな笑いを交えつつ痛烈に批判した作品である。
 冒頭、ルイス・ブニュエルやイングマール・ベルイマン、黒澤明やオーソン・ウェルズ、ローレル&ハーディ、バスター・キートンらに敬意が表されているように、過去の先達たちの成果が巧みに取り込まれていて、映像的な実験という意味でも、また細部へのこだわりという意味でも非常に面白かったが、いくぶんテンポ感が緩いというか、あともうちょっとだけテンポよく運んでもらえれば、一層すとんすとんと腑に落ちるような気がしないでもなかった。
(例えば、多分にこの作品に影響を与えただろう、黒澤明の『生きる』の、特に前半部分のテンポのよさとどうしても比較してしまう)
 とはいえ、アレアの強い想いと意匠とがうまく結びついた作品であることも事実で、やはり映画好きなら観て損はないと思う。

 なお、上映終了後、今回のキューバ映画祭2009のプログラムディレクター、比嘉世津子さんのトークがあったが、その情熱的な話っぷりも含めて、なかなかの聴き(観)ものだった。
posted by figarok492na at 19:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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