2009年09月12日

1994年2月22日(欧州音楽日記22)

 ☆ロッシーニ:歌劇『ラ・チェネレントラ』公演

  指揮:アダム・フィッシャー
  会場:バイエルン州立歌劇場(ミュンヘン)


 なんとかバイエルン州立歌劇場のチケットを手に入れて*1、ロッシーニの『ラ・チェネレントラ』を観ることができた。

 バイエルン州立歌劇場は、なかなか大きい。
 それだけに立ち見席を4階などにするとは「田舎者」のやることだ!
 と、憤慨するが、音は悪くない。
 ただオーケストラが響き過ぎて、時として歌声が埋もれてしまうときもあった。
 まあ、チケットが手に入っただけよかっただろう。
 もしチケットが手に入らなかったら…*2。

 演出は、今は亡きジャン・ピエール・ポネルのもの。
 一番上の、それも右端で立ち見なので、完全に舞台が見えないのが残念だが、演出はトラディショナル、そして音楽を活かしつつ巧みに笑わせる。
 やはり、モーツァルトやロッシーニといったブッファを得意とした人だったんだなあと実感する。
(彼の演出した、『フィガロの結婚』に接することができなかったのは残念)

 指揮は最初のクレジットとは違って、アダム・フィッシャー。
 イタリア流のロッシーニがどのようなものかいまひとつわからない私には、「やあ、ロッシーニ・クレシェンドがよく表わされていた」などとは恐ろしくて言えないが、オーケストラはよくまとまっていたと思う。
 オーケストラピットにヴァイオリン(ファースト)が10人入っているのには驚いた。
 最近はロッシーニを演奏する際のオケのメンバーも減っているはずだから。
 その分、力強い響きが出ていた。

 歌手陣は、素晴らしい出来。
 第1幕のはじめのうちは、ちょっとオケと合わない部分もあったが、後半はばっちり盛り上がり、第2幕は一気に聴かせた。
 アリドーロのカール・ヘルムは、謹厳な哲学者ぶりを発揮。少し速い歌詞は難しかったようだが。
 チェネレントラの姉妹役、ペトリ、ユングヴィルトは、ソロで活躍する部分はないもののの、アンサンブルに、そしてコミカルな演技に活躍。
 ダンディーニのアルベルト・リナルディは、美声。
 王子ラミーロ役は、ロベルト・ガンビル。ケルンの『アルジェのイタリア女』でも聴いた人*3。会場からブーが出ていたが、確かに彼のファルセットにはちょっと無理があるかも…。ただ、この役を最後まで声を落とすことなく歌えたことは評価しなければなるまい。
 そしてドン・マニフィコ役のエンツォ・ダーラ。最初はなんだ普通のバスじゃないかと思っていたが、アンサンブルやソロでの彼の見事さときたら。早口、裏声、ほとんど完璧だし、芝居も達者。ロッシーニのブッファだけで活躍しているといえば語弊があるかもしれないけれど、もしそうだとしても、これだけの逸材、拍手拍手。

 チェネレントラ(シンデレラ)=アンジェリーナのチェチーリア・バルトリ。
 顔だけ見ていてか細い声でも出すのだろうと思ったら、これは大間違い。
 れっきとしたメッツォの声。
 オペきちは、出だしの音がまだ完全でないなどと重箱の隅をつつくのかもしれないが、そういう点には疎い私は、素直にブラボー。
(手放しでブラボーを叫んだのは、これが初めて)
 まず声が美しい。高いところから低いところまで、ほぼ無理なく出ている。
 また、技術的にも、コロラトゥーラや早口など、技巧たっぷりのロッシーニの音楽を難なくこなしていたと思う。
 それと、ガレリアの遠目からでも映えるその容姿。写真では少々クセのある顔立ちだが、舞台では実に映える。
 これはレコードだけ聴いていても、ビデオで近くから映しているのを観ただけでもわからない実感。

 なんやかやイライラしていたが*4、この公演を観ることができて本当によかった。
 愉しい作品、愉しい公演。
 拍手が10分以上続いたということを付記しておく。
 ブラボーブラボーブラボー。



*1:別の公演の宣伝活動に来ていた、ミュンヘンの音楽大生の女性の強い助けがあって立ち見席を手に入れることができた。

*2:この公演を観るためだけに、ケルンからミュンヘンまで行ったので。ユーレールユースパスを持っていたので、交通費自体はかからないとはいえ。

*3:1993年11月18日のケルンでの公演。アルベルト・ゼッダの指揮、フルッチョ・フルラネットらの出演、ミヒャエル・ハンペの演出によるこの『アルジェのイタリア女』は音楽的にも高い水準にあり、お芝居としても抱腹絶倒の出来だった。

*4:ミュンヘン到着後、現地の国粋主義者とちょっとしたいざこざがあった。破れ傘刀舟の真似もあり相手を粉砕したが、自己嫌悪をはじめ嫌な気持ちが残っていた。
posted by figarok492na at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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