2009年09月09日

1994年2月15日(欧州音楽日記19)

 ☆ロンドン・フィル定期演奏会

  指揮:ロジャー・ノリントン
  会場:ロイヤル・フェスティヴァル・ホール


 身体の不調を感じつつも、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールへ。
 ロンドン市街とは対岸にあるサウスバンク、その芸術センターの目玉の一つが、このホール。
 今日聴いたロンドン・フィルをロンドンの5つのオーケストラからレジデント(座付き)オケに選択した。

 で、今日のコンサートはもともとドイツ出身の巨匠クラウス・テンシュテットが指揮する予定だったが、キャンセルとなった*1。
 癌の状態が相当悪いのではないだろうか?*2
 代役は、ロジャー・ノリントン。ヨーロッパ室内管弦楽団のブラームス他を聴いていたので、ベートーヴェンとブラームスというプログラムが実に愉しみだった*3。

 ロイヤル・フェスティヴァル・ホールのホール自体はあまり飾りっけがない。
 ただし、レストラン*4、バー、書店、レコードショップが揃っていて、ゆとりを感じさせる。
 ホールの残響はそれほど長くないが、楽器の音がクリアに聴こえるので、「悪い」とは思わない。
 ロンドンの五大オーケストラの演奏との関係が感じられるのと*5、イギリス人の音楽に対する嗜好がはかられて面白い。
(バーミンガムの新しいシンフォニーホールは、残響度の高いホールで、「高い評価」を受けているらしい。一度行ってみたいのだが…)

 さて、演奏のほう。
 ほぼ思っていたとおり。ただ当然のことながら、ケルンに比べお客さんの数が多い。
 ベートーヴェンの『コリオラン』、交響曲第8番、ブラームスの交響曲第4番という典型的なドイツ・プログラムなのだが、ノリントンが振ると斬新な音楽が奏でられる。

 『コリオラン』では、力強さが印象的。
 そして、ベートーヴェンの第8番。もちろんヴィヴラートは極力行われていないし、テンポのとり方も速い。そしてティンパニの強打。これまでの一般的な演奏だと「小さくてユーモラスな交響曲」としか感じられないものが、ノリントンの解釈で聴くと、第7番と対になる「舞踏の交響曲」なのだと思い知らされる*6。

 休憩中、舞台にいたチェロの奏者と話して、ブラームスの解釈について尋ねてみたが、あまり共感していないよう。普通なら、それほど練習しなくてもよいだろうから。
 「京都は素晴らしい」と、しきりに誉めていた。

 後半のブラームス。
 第1楽章は、ヴィヴラートをたっぷりかけて思い入れのこもったゆったりとしたいテンポの演奏が行われるが、ノリントンの場合は例の如くだから素っ気ないくらい。
 ただし、コーダの部分の盛り上がりは、尋常ではなかった。
 そして、フィナーレまでこの調子が続く。
 いずれにしても、ロマンティシズムのほこりをはらった、ベートーヴェンとブラームスの音楽のつくりの違いがはっきりと理解できる興味深い演奏だった。
(この曲になると、オケも大変か、ずれやミスもいくつかあったが。とはいえ、こうした演奏を適切にこなすことのできるロンドン・フィルは、やはり技術的に高いオーケストラであると言える)



*1:当日券を購入する際、係の男性が何度も「You know?」と繰り返した。後述の如く、僕はノリントンの演奏に期待していたので「I know」と鷹揚に返事をした。

*2:その後、テンシュテットは1998年1月に亡くなってしまう。

*3:1993年9月19日、ケルン・フィルハーモニーでのコンサート。このときは、ブラームスの交響曲第3番やシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」などが演奏されていた。ノリントンはシューベルトの交響曲第4番をロンドン・クラシカル・プレイヤーズ<EMI>と録音しているが、ヨーロッパへ行きがけのシンガポール航空の飛行機の中でたまたまこの録音を何度か聴いていたこともあり、非常に印象深いコンサートとなった。

*4:開演前にここで夕食をとった。満席だったこともあり、初老の夫妻に誘われ相席をさせてもらったが、夫のほうはロンドン大学の数学の教授、妻のほうも研究者といういわゆるインテリの夫妻で、日本の政権交代などについて身振り手振りを交えて話をした(英会話が得意ではないので)。夫は自由民主党、妻は労働党左派の支持者だったのだけれど、小選挙区制度に関してはともに「反対」。日本が小選挙区制度に変わることにも懸念を示していた。

*5:五大オーケストラの一つ、ロンドン交響楽団はバービカン・センターに本拠を移していたし、確かロイヤル・フィルやBBC交響楽団もバービカン・センターでの定期演奏会を開催していたが。

*6:ちょうど同じ列、近くの席に日本の女子大生二人が座っていたのだが、演奏が始まったとたん、「なに、これ」といった驚嘆の声を漏らしていた。
posted by figarok492na at 12:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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