2009年08月21日

1994年1月11日(欧州音楽日記3)

 ☆ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団定期演奏会

  指揮:カール・ハインツ・シュトックハウゼン
 管弦楽:ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
  会場:ケルン・フィルハーモニー


 最近、風邪気味(風邪そのもの)のため*1、音楽会は遠慮していたが、シュトックハウゼンという日本ではそう簡単に聴けない作曲家であることと、瀬尾さん*2がチケットを用意してくれたということもあって、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の定期に出かけた。
 と、言っても、オーケストラの出番は第2部のみ。両端の第1部と第3部は、シュトックハウゼンの子供を中心としたアンサンブルによる演奏。
(会場に行くまで、そして第1部の舞台を観るまで知らなかったことだが)

 曲は、過去の作品で1990年に手直しされた「Hymnen」。
 曲の引用度から言えば、当然「国歌」とすべきなのだろうが、裏返しの「讃歌」という意味もあるのではなかろうか?
 翻訳するのは難しい言葉、少なくとも題名である*3。

 第1部はシュトックハウゼン兄弟とあと二人を加えたアンサンブルによる演奏。
 トランペット等々*4、ピアノのほかは、エレクトリック−シンセサイザー、そしてあり合わせの打楽器?
 コンクレートミュージック、そしてエレクトリックミュージックの可能性を追求する試みなのだろうか。
 それだけでなく、メッセージ性も当然持った曲だろう。
(その内容について良く理解できたわけではないが…)
 私は裏返しの「讃歌」と書いたが、なぜそう思うかといえば、例えば、フランス国歌をはじめとした引用される国歌の旋律のグロテスクさ、そしてシンセサイザーの言葉の唸り、一種儀式的な行為(最後に火が消えるのを、奏者が会場に腰を下ろし見守るというのは、あまりにも思わせぶりな態度だが)。
 引用される国歌とその背後にある国家は、なんら誇らしげなものではないようだ。

 それは、第2部のオーケストラとシンセサイザー(エレクトリック・システム)の演奏においても変わらない。
 ここでは、アメリカ国歌をはじめ、あの「君が代」さえ引用されているが、美しいものとは言えない。
 ただし、ここでは相手がオーケストラということもあってか、第1部のような「音の実験」(木の枝や水を使うという)の要素は薄められていたようである。
 その分、シュトックハウゼンがきちんとした音楽を学んでいた(整然としたオーケストレーション)ということも実感できた。
(「君が代」には、まいった!)
 それと、瀬尾さん、立ってのソロ、ご苦労さま。

 身体が本調子でないことと、オケは、これでおしまいということもあって帰宅する*5。
 ただ、つまらなかったわけではない。
 シュトックハウゼンが行った「音の実験」は、今では珍しくないのかもしれない。
 ただ、彼が今どう考えているかわからないし、もしかすると彼が思っている以上に、この曲は、今だって(今だから?)重くのしかかってくる。
 日本で聴くのではなく、このヨーロッパで聴いているからかもしれないだろうし、私という人間がこういうことに人よりも(どの人? 会場でも「あくび」している人もいれば、ブーイングも出ていたし)少しは敏感*6(考え過ぎ)なのかもしれないだろうが。
 この曲の音楽以外=「国歌」→「国家」、民族問題、排外主義等々=のところに頭が行ってしまった。



*1:ヨーロッパの乾いた風土もあってか、僕はしばしば風邪気味になっていた。

*2:瀬尾麗さんのこと。ケルン市立歌劇場のオーケストラ=ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団のヴィオラ奏者で、ダルムシュタット・アンサンブルの一員。ケルンで部屋を貸してもらっていた指揮者の本多優之さんの関係で知り合いとなり、オペラやコンサートのチケットを準備してもらったり、ゲネプロを見せてもらったほか、一度手作りの食事をごちそうになったこともあった。

*3:この作品が、シュトックハウゼンの電子音楽の大作「賛歌」の改作であることを知るのは、それからだいぶん経ってからのことである。なお、Hymnenというタイトルに賛歌と国歌の二重の意味合いがあることは言うまでもない。

*4:不明。もしかしたら、トランペット以外の楽器を吹いていたのかもしれない。

*5:今では、第3部も聴いておけばよかったと思っている。

*6:臆面がない…。それと、ここら辺は吉田秀和の影響が表われているような気がする。
posted by figarok492na at 13:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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