☆ドメニコ・スカルラッティ:ソナタ集(15曲)
イーヴォ・ポゴレリチ(ピアノ)
1991年、デジタル録音
<DG>435 855-2
前回のCDレビューで記した如く、畢竟CDは音楽の缶詰。
で、あることに間違いはないのだけれど、同じ缶詰でも、演奏される音楽の種類によってはそれとのつき具合、なじみ具合も変わってくるわけで。
例えば、同じクラシック音楽のくくりの中でも、演奏者しめて何人おんねんと突っ込みを入れたくなるようなマーラーの一千人の交響曲と、クラヴィコードの独奏によるバッハの器楽曲では、当然缶詰度合い、もとい自然不自然の度合いというものは大きく違ってくる。
一つには、音楽を聴くスペースと音量の関係もあって、確かに当方のようなワンルーム暮らしの人間には、四管編成のオーケストラの録音をフルヴォリュームで聴くことなどどだい無理な話だ。
(「いいじゃん、聴きなよ!」、と呼ぶ声あり。ばあか、近所迷惑だしょうが!)
加えて、管弦楽曲や合唱曲だと演奏者は多勢、こちらは一人と、多勢に無勢、ちょっとばかりしらけた気分にもなるが、相手が少人数の演奏ならばこちらも気がねなく音楽が愉しめるし、まして相手が一人なら、彼彼女の奏でる音楽に一対一で向き合える…。
って、まあ、これはそれこそ気分の問題なんだけど。
イーヴォ・ポゴレリチの弾いたドメニコ・スカルラッティのソナタ集は、まさしく一人スピーカと向かい合う人間にとっては、最高級の音の缶詰ということになる。
イーヴォ・ポゴレリチといえば、例のショパン・コンクールでの騒動に始まり、最近の仏門にでも帰依したのかと思わされるような風貌にいたるまで、どこかミステリアスで尋常ならざるピアニストで、実際一筋縄ではいかない音楽の造り手であることも確かなのだが、一方で、彼の演奏には、楽曲の把握、テンポ感、音色等々、聴く人をひき込むに十二分な魅力に満ちあふれていることも、また否定できない事実なのである。
このドメニコ・スカルラッティのソナタ集も、そうしたポゴレリチの魅力、個性がいかんなく発揮された一枚となっている。
表面的にはしごく平明で、ひとつ間違うと無味乾燥にも陥りかねないドメニコ・スカルラッティのソナタだが、ポゴレリチは個々の作品が本来持っている音楽的な仕掛けや美しさを鮮やかに描き分けているのではないか。
(個人的には、一番最後に収められたカークパトリック番号380のソナタが、とても好きだ)
何度聴いても聴き飽きない、そして聴けばきくほど発見のある一枚。
大いにお薦めしたい。
それにしても、タワーレコードのセールで購入したから、このCDがたったの1290円。
いくら生とはいえ、あの×××やこの×××××が●●●●円。
無理して不味いものを「外食」なんかするよりも、家でとびきり美味しい缶詰ですましておこうかという気になっても、やっぱり不思議じゃないよね…。
2009年04月20日
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