☆MINO meets フォーク&ニューミュージック
加羽沢美濃(ピアノ)
<DENON>COCO-80811
学生時代、学部の後輩といっしょにフォーク・グループを組んでいたことがある。
と、言っても、ゆずだとかなんだとか、ストリートミュージシャンののりはしりを期待されるとちと困る。
トリオ・ザ・ポンチョス・ブラザースというグループ名からも明らかなように、フォークはフォークでも、元来のフォークミュージック(民俗音楽・民衆音楽)、とまではいかないが、そこから派生して60年代を席巻した、いわゆる社会的な意識の強いフォークソングを歌うことを目的として結成されたグループで、実際、レパートリーもウィ・シャル・オーバー・カムだとかダウン・バイ・ザ・リバーサイド、風に吹かれてだとか戦争の親玉、受験生ブルースだとか自衛隊に入ろうといった、今から20年近く前のこととしても、いささか時代遅れの感は否めないものだった。
まあ、それでも、なんとか集会だのなんとかチャリティーの集いだのに呼ばれたりして、あちらの「いか焼けたよー!」の屋台のおばちゃんの声や、こちらの「お兄ちゃんがたたいたー!」の子供の声にもまれつつ、なんやかんやと歌っていたことは、今さらながら懐かしく思い出される。
で、今回取り上げる加羽沢美濃のピアノ・ピュア・シリーズ中の一枚、「MINO meets フォーク&ニューミュージック」は、そんなトリオ・ザ・ポンチョス・ブラザースの歌ったフォークソングとは対照的な、それこそ流行歌・ヒットナンバーと呼ぶに相応しい有名曲の数々を加羽沢さんがピアノソロにアレンジしたものである。
基本的には、耳なじみのよさが身上、聴き流しにもってこいのCDで、くだくだくどくどといちゃもんをつける必要はないんじゃないのかな、というのが僕の正直な感想だけど、曲の性格に合わせた加羽沢さんのアレンジの妙については一言付け加えておくべきかとも思った。
(個人的には、小坂明子の『あなた』や、杏里が歌った『オリビアを聴きながら』が気に入った。逆に『時代』は、中島みゆきというより薬師丸ひろ子的な雰囲気が濃厚だ)
そういえば、左翼の闘士としても知られた作曲家ポール・ジェフスキは、かつてダウン・バイ・ザ・リバーサイドをピアノ・ソロ用にアレンジしたが(マルク・アンドレ・アムランが弾いたハイペリオン盤を所有)、加羽沢さんにも受験生ブルースや自衛隊に入ろうを…。
いや、彼女にそれを期待するのはあまりにも酷というものだ。
つまるところ、よくも悪くも、そういうことなのである。
えっ、何を言っているかわからないって?
友よ、答えは風に舞っている。
風に吹かれて舞っている。
2009年03月22日
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