☆シベリウス:管弦楽曲集第1集
ソイレ・イソコスキ(ソプラノ)
ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団
1992〜95年、デジタル録音
<DG>447 760-2
エストニア出身の指揮者ネーメ・ヤルヴィといえば、BIS、CHANDOS両レーベルへの一連の録音(まさしく、当たるを幸い的な)が強く印象に残っていて、実際彼の大車輪の活躍がこの二つのレーベルをマイナー・レーベル中のメジャー・レーベルへと押し上げたと言っても過言ではないはずだけれど、その後もドイツ・グラモフォンで着々とリリースを重ねるるなど、オーケストラ音楽好きのディスク愛好家にはどうしても欠かすことのできない存在であり続けている。
もちろん、ネーメ・ヤルヴィの場合は、録音スタジオのみで偉力を発揮するタイプの音楽家ではなくて、僕自身、ケルンWDR交響楽団で実演に接したベートーヴェンの交響曲第7番など、いわゆるオーソドックスな音楽づくりだったとはいえ、ライヴ感覚にあふれたエネルギッシュな仕上がりだったし、あいにく聴きそびれてしまった京都市交響楽団の定期演奏会でも、生の魅力をフルに活かした演奏を生み出していたという。
つまるところ、ネーメ・ヤルヴィは、ライヴ・録音両面でまんべんなくその実力を知らしめてきた、現代を代表する音楽家の一人であり、そうした彼の姿勢は、息子のパーヴォ・ヤルヴィにもしっかり受け継がれていると、僕は思う。
今回取り上げるシベリウスの管弦楽曲集は、そのネーメ・ヤルヴィが手兵エーテボリ交響楽団とともにドイツ・グラモフォンに録音したシベリウス・アルバムの第1集にあたるもので、おなじみフィンランディアや「カレリア」組曲の他、ルオンノタール、アンダンテ・フェスティヴォ、大洋の女神(波の娘)、「クリスティアン2世」組曲と、有名どころからそうでない作品まで、バランスよく収録されている。
で、演奏はもう自家薬籠中のものだから…。
と、書きかけたが、これは録音場所のエーテボリのコンサートホールの残響のよさや、ドイツ・グラモフォンのスタッフの音響づくりもあってかもしれないが、「カレリア」組曲の行進曲風にやフィンランディアでは、角を矯められたというか、角がグラマラスに丸められたようなもやっとした感じがしたことも事実で、それには1990年あたりから、ネーメ・ヤルヴィがアメリカのデトロイト交響楽団のシェフを務めていたことと関係しているのではないかと一瞬思ったりもした。
逆に、そうした音楽づくり、音質がうまく活かされているのが、ルオンノタールやアンダンテ・フェスティヴォで、特にルオンノタールでは、ソイレ・イソコスキの透明感があってつんとした美しい声も加わって、神秘的な雰囲気がよく伝わってきた。
また、「クリスティアン2世」組曲も、音楽のツボ、聴かせどころをしっかりと押さえた演奏で、劇場人という一面も含めたシベリウスの個性がよく表れているのではないだろうか。
上述したような音楽づくり、音質もあって、もしかしたらそこで好みが分かれるかもしれないが、税込み1200円程度までなら、シベリウスの管弦楽曲を過不足なく愉しむという意味では、安心してお薦めすることができる一枚だと思う。
それにしても、ネーメ・ヤルヴィにはもう一度京都市交響楽団に客演してもらいたいものだなあ。
彼の指揮するベルワルドとかステンハンマルの交響曲を生で聴いてみたいもの。
2009年01月20日
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