2009年01月06日

粗忽の政務官

 坂本哲志総務政務官の発言を耳にして、『赤ひげ診療譚』の、
「これまでかつて政治が貧困や無知に対してなにかしたことがあるか、貧困だけに限ってもいい、江戸開府このかたでさえ幾千百となく法令が出た、しかしその中に、人間を貧困のままに置いてはならない、という箇条が一度でも示された例があるか」
という言葉を思い出した。
 それは、ちょうど今、同じ山本周五郎の『季節のない街』を読んでいることもあってのことだけれど、昨今のこの国の諸状況を見るに、赤ひげこと小石川療養所医長新出去定ならずとも、ついついそのような憤りの言葉を口にしたくなることは疑いようのない事実である。

 ただ、だからと言って、今回の坂本総務官の発言の中に一切の真理が含まれていないと言い切るつもりは、僕にはない。
 少なくとも、現在の経済システムを維持し強化しようとする、もっとありていに言えば、いわゆる大企業大資本の代弁者であり代理者たる彼の立場からすれば、真理も真理、思いのままを語ったまでと言うことになるのではないか。
 もちろん、社会的経済的な認識という意味合いから考えて、彼の発言は根本的には間違っていると僕は思うし、よしんば、今回の発言に含まれている事どもを彼の側の真理と認めたとしても、彼の発言は一個の政治家として大きく間違っていると思う。
 なぜなら、代議士であり総務政務官という公の立場に立つ人間が、それも公の場所であのような発言を行えば、それがたとえ長い発言の中の一部だったとしても、どのように報道されどのような反応が返ってくるかをわかっていない段階で、政治家失格であろう。
 まして、昨日の今日で発言を撤回し謝罪するとは、恥知らずもよいところだ。
(「政治家は本来貧困を…」といった正論は、あえてここでは記さない。それと、大平正芳存命ならば、今回の坂本発言にどのような感想を持つだろうか。失言癖で知られた池田隼人に対して語ったように、「どうせ同じことをいうのであれば、ヴォキャブラリーの選択に、一寸注意して欲しかった」と、もしかしたら口にするのではないか)

 そういえば、坂本総務政務官は以前ウェブサイト上の選挙の当選のお礼がらみで、公職選挙法を指摘されたことがあったはずだ。
 確かにそれは、本人が説明しているように「うっかり」していてついやってしまった凡ミスかもしれないが、そうした経緯のある人物が選挙とも大きく関係している総務省の政務官という地位にあることには、やはりどうしても疑問が残る。
(これは、任命者である麻生総理の問題でもあるけれど。てか、こういう政務官や総理大臣を許容しているのも僕ら自身であって、それこそ「自己責任」ということになる)

 それにしても、この坂本哲志という人物は、相当おっちょこちょいというか、うっかりが多い人のようだ。
 今回の発言があって、彼のホームページをのぞいてみたが、その日記*で、民主党を厳しく批判しながら、あのチェ・ゲバラを高く評価している。
 チェ・ゲバラとはいったいどのような人物か?
 それこそ、赤ひげのような憤りを胸にし、人々の病を治療することに留まらず、世の病社会の病を力づくでも治していくことにその生命を賭した人物ではなかったか。
 そのような人物を、あのような発言を行った坂本総務政務官が持て囃すとは、まるできちんと文章も読まずにブッシュの馬鹿息子がサイードを誉めそやすような、まさしく粗忽の極みであり、読んでいるこちらがたまらない気持ちになってくる恥ずかしい話である。

 林達夫ではないが、結局粗忽者につける薬はないし、粗忽者は粗忽なことしかしでかさない。
 そして、粗忽者を支える者こそが一番の大粗忽者ということだ。


 *ただし、この日記は当選のお礼がらみの部分やチェ・ゲバラの記述のある一月五日の項だけを読むべきではないだろう。
 過去の記述を読めば、この坂本哲志という政治家の別の側面も見えてくるのではないか?
posted by figarok492na at 14:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
figaroさん、こんばんは!
◎この人、あったま悪いっすね・・。
◎「心で思うこと」と「口にすること」は別だよね・・。
等と思っていたのですが、
件の発言に関して、他のブログ群などロムってると、結構共感してる意見もあるんですね。

「自分の<粗忽>発言が、批判も受けるにせよ、ある程度は共感も得るだろう」と確信犯的に思ってるからこそ、あんな発言するのかも、とか思ったりして(←そこまで考えてないって、って声もあり(^^;)。
何だか、某都知事の一連の発言を思い出したりもします。
いずれにせよ、おおこわ。です。
Posted by calicia at 2009年01月07日 00:05
 こんばんは。

 ちょっと調べてみましたが、彼の発言を支持する意見は、確かに多いみたいですね。
 いつものことながら、発言するほうも発言するほうなら、と思ってしまいます。
 少なくとも、「切り捨てられる」側にいるはずの人間が彼の巷間伝えられている発言を支持することには、ちょっと違うんじゃないかと感じてしまいました。

 ホームページの日記を読むかぎり、嵐を呼ぶ都知事ほど確信犯じゃないような気がしますね。
 年末、テレビに出まくっていた厄病神の貧乏神に関する記述なども含めて考えると、長い発言の中に本音が出てしまったのでは?

 それにしても、定額給付金の問題といい、与党の政治家のたがの外れっぷりにはいくら「自己責任」とはいえ、情けない思いがしますね。
Posted by figaro at 2009年01月07日 19:10
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