☆モーツァルト/バセットホルン・ボンボン
演奏:シュタードラー・トリオ
録音:1988年6月
<PHILIPS>446 106-2
三者三様、千差万別、十人十色、朱に交われば赤くなり。
って、最後のだけは違ったか。
この世に同じ人間が二人といないように、ピリオド楽器による演奏も、ピリオド奏法を援用したモダン楽器による演奏も、演奏者並びに作品が変わればその内容は大きく異なったものとなる。
さしずめ、前回取り上げたニコラウス・アーノンクール指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によるハイドンの二つの交響曲がシンフォニックな拡がりを持った外向的な音楽であり演奏であるとすれば、今回取り上げるシュタードラー・トリオを中心としたこのアルバムは、インティメートな雰囲気が濃密な内向きの音楽であり演奏と評することができるのではないか。
(もちろん、ここでいう内向きとは、いわゆる「内向的」といったマイナスのイメージが伴うものではない。あくまでも、音楽の本質の違いを言い表したかっただけだ)
モーツァルトの、バセットホルン(相当単純化して説明すると、クラリネットの仲間)やクラリネットによるトリオのための小品に加え、そのトリオを伴奏とした三重唱曲を収めたこのCDは、まさしく作曲家とその仲間たちが味わっただろう愉しさや親密さに満ちあふれていて、こちらも聴くたびに本当にほっこりとした気分になってくる。
もちろんそれには、ピリオド楽器の腕扱き奏者エリック・ヘープリチをはじめとした、18世紀オーケストラメンバーによるシュタードラー・トリオ(このアルバムに収録された作品の成立にも関係した、モーツァルトの友人の名が冠されている)の力まず激さずばたつかない、柔らかくて暖かい演奏も大きくものを言っていることは、改めて言うまでもあるまい。
加えて、カミユ・ヴァン・ルネン(ソプラノ)、マイラ・クレーゼ(アルト)、ペーター・ダイクストラ(バス)の三人も、澄んだ歌声とバランスのよい歌唱で、作品やシュタードラー・トリオの演奏ととてもぴったりだと思う。
これまた中古で税込み500円で手に入れたCDだが、税込み1200円程度までなら安心してお薦めできる一枚。
特に、モーツァルト・ファンには大推薦だ。
2008年12月27日
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