☆モーツァルト:協奏交響曲K.364、K.297b
トッド・フィリップス(ヴァイオリン)
モーリーン・ギャラガー(ヴィオラ)
スティーヴン・テイラー(オーボエ)
デイヴィッド・シンガー(クラリネット)
ウィリアム・パーヴィス(ホルン)
スティーヴン・ディブナー(ファゴット)
オルフェウス室内管弦楽団
1989年12月、デジタル録音
<DG/ドイツ・グラモフォン>429 784-2
オルフェウス室内管弦楽団といえば、指揮者を置かない自発的・民主的なオーケストラという売りで、ちょうど僕がクラシック音楽を熱心に聴き始めた頃、というから、今から25年ほど前に鮮烈なデビューを果たしたアメリカのアンサンブルだが、今回はそのオルフェウス室内管弦楽団の面々によるモーツァルトの二つの協奏交響曲のCDを取り上げる。
で、この二つの作品の詳細については、それこそ、例えば『モーツァルト名盤大全』<音楽之友社>のような専門書・入門書にあたっていただきたいと思うのだけれど、簡単にいえば、協奏曲的なソロの妙技と、交響楽的なアンサンブルの妙味を同時に味わうことのできる一粒で二度美味しいつくりのジャンルの作品である。
まず、ヴァイオリンとヴィオラの独奏によるK364の協奏交響曲は、独奏者二人の折り目が正しく清新なソロや、オーボエ・ホルンの活躍には好感が持てるものの、オルフェウス室内管弦楽団の特性と大きな構えの音楽づくりにどうしてもずれを感じてしまったことも事実で、この作品の最高の名演の一つとは、残念ながら僕には言い切れない。
ただし、こうやってCDで繰り返し聴くのにはぴったりの演奏であると思ったこともはっきりと明記しておきたい。
一方、未だに偽作の疑いが濃厚な管楽器のための協奏交響曲K297bは、古くはマリナー盤、今ではハーゼルベック盤と、ロバート・レヴィンの補筆版を聴き続けてきたこともあって、本来の版を聴くと、毎回座りの悪さを感じてきたのだが、驚くことにこのオルフェウス室内管弦楽団のCDだとそうした違和感を全く持たずに全曲聴き終えることができた。
当然、それにソリストたちの優れた演奏が大きく関係していることは言うまでもないことだろうけれど、それより何より、アンサンブルとしてのバランスが見事にとれているという点を僕は強調したい。
そして、この演奏が、まさしく協奏交響曲の真骨頂を示す演奏であり、なおかつオルフェウス室内管弦楽団の本質をよく表した演奏になっているとも、僕は強く思う。
(この作品のモダン楽器による録音としては、第一にお薦めしたいとすら言い切りたいほどだ)
それにしても、これだけ愉しめるCDを、いくら中古CDとはいえ僅か452円で手に入れることができるとは。
しかも目立った傷のない、美質な盤だというのだから、これこそ本当に有り難い話だと痛感した次第。
2008年11月29日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック