☆シベリウス:ピアノ作品集
オリ・ムストネン(ピアノ)
2002年7月、デジタル録音
<ONDINE>ODE1014-2
デッカやRCAといったメジャー・レーベルとの契約が切れて、一時ほどの大がかりなCDリリースはなくなったオリ・ムストネンだが、世界的なコンサート活動や母国フィンランドのオンディーヌ・レーベルへの録音、さらには指揮者へのかかんな挑戦と、現在でも広範囲な活躍は続いている。
先述したオンディーヌ・レーベルからリリースされた、このシベリウスのピアノ作品集も、そうしたオリ・ムストネンの好調ぶりが十二分に発揮された一枚と言えるだろう。
シベリウスというと、どうしても交響曲を中心としたオーケストラ作品(その中には、当然ヴァイオリン協奏曲も含まれる)に関心がいきがちで、実際それに見合うだけの力作傑作ぞろいなのだけれど、こうやってピアノ作品をじっくり聴いてみると、確かに大向こうをうならせるような派手さには欠けるものの、なかなかどうして、知らないまま聴かないままでいるには惜しい魅力的な音楽世界は築き上げられている。
このアルバムには、10の小品や13の小品、ロンディーノ、バガテル集などが収めらているが、その多くが抒情性と透明感にあふれる美しいメロディと極端に走らないほどよい実験性、前衛性との調和がうまくとれた音楽に仕上がっていて、実に聴き心地がよい。
もちろんそこには、ムストネンのドライ過ぎずウェット過ぎず、高い技術力を持ちながらテクニック偏重に陥らない、なおかつ一つ一つの作品に対するテキストの読み込みの深い演奏が大きく貢献してるだろうことは、言うまでもないことだろうけれど。
作品やムストネンの音楽性によく添ったオンディーヌ・レーベルのクリアな録音も含めて、大いに満足のできる出来上がりで、特にこれから晩冬までの静かな夜、一人ゆっくり耳を傾けるのには最適なアルバムではないか。
ムストネンの熱狂的なファンやシベリウス・フリーク、北欧音楽好きピアノ音楽好きにとどまらず、その他クラシック音楽好きにも強くお薦めしたい。
大推薦。
2008年11月19日
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