2008年03月08日

ドイツ語の『因幡の白うさぎ』に触れて

 正午過ぎ、たまたまラジオ第2(いわゆる「教育ラジオ」)を聴いていると、ドイツ語の時間に、『因幡の白うさぎ』の話をドイツ語でやっていた。
 たぶん、ドイツ語の格式ある言葉の使い方や歴史的な表現を学ぶ教材として『因幡の白うさぎ』が選ばれたのだろうということは想像に難くないし、実際、そうした解説も施されていたのだけれど、僕にはどうにもしっくりとこない妙な感情が残ってしまった。

 と、言っても、何も「大きな袋を肩に」した大黒さんが、ひーひー苦しむ白うさぎ相手にドイツ語を口にしている場面まで空想した訳ではない。
 ただ、『因幡の白うさぎ』という、正直大時代的で、おまけに良い意味でローカル色豊かな物語がドイツ語で語られることに、妙なちぐはぐさ、アンバランスさを感じてしまったのだ。

 だが、一方で、それじゃあ、ギリシャ神話を日本語で聴いたり読んだりすることに対して、お前はしっくりこないできたのか、いや、しっくりきていただろう、という内面の声がすることも事実である。
 もっとしつこく言えば、お前はほとんどドイツ語(のテキスト)を理解できないくせにワーグナーの音楽を聴いたり(現に、ダニエル・バレンボイムがシカゴ交響楽団を指揮した彼の音楽のCDを今聴いている)、お前は全くフランス語(のテキスト)を理解できないくせにプーランクの音楽を聴いたりするのはどうなのか、という疑問・疑念と、このことは深く関わっているように、僕には思えてならない。

 いずれにしても、ドイツ語で語られる『因幡の白うさぎ』にしっくりこない自分自身と、そうした自分自身を生み出した土壌・環境について、より自覚的である必要があるのではないか。
 少なくとも、そうした自覚と考察抜きに為された表現は、非常に表層的で、不誠実であると、僕は考える。
(言っておくけど、「しっくりとこない」こと自体があかんと思っている訳ではないので、その点は悪しからず)
posted by figarok492na at 14:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
figaroさん こんばんは。

>ドイツ語で語られる『因幡の白うさぎ』
これ、聞いてみたかったです〜。いかに「しっくりしないか」を実感したいです!

といいましても、私も、
「「しっくりとこない」こと自体があかんと思っている訳ではない」に同意いたします。
(仰るように、「何がしっくりいかないのか」に自覚的であることは重要と思いますし、
 かつ、その要素を分解していく作業は結構楽しいのではないかと思います)

そもそも、「しっくりしないこと」への許容度って、
その文章が作られた背景・目的によっても変わるのではないか?と思いました。
例として、2つの方向性が考えられます。
・「第一言語が日本語である人たち」がドイツ語を学習するための教材 なのか
・「第一言語がドイツ語である人たち」で、かつ「日本の民話に興味を持つ人たち」のための教材 なのか。

後者の場合は、「日本文化に興味を持った人に、少しでも知ってもらえる」という意味で、
ネイティブから見ればしっくりこない部分が多少あっても、
許容範囲はやや広くなるのではないか・・と個人的には思いました・・。(でも番組では前者だったのでしょうか)


話は変わりますが、『因幡の白うさぎ』が収められている『古事記』も「変体漢文」で書かれているので、
もし、それを書いた人が、
私たちが慣れ親しんだ『現代語版・因幡の白うさぎ』を読んだら、
「しっくりしない」を超えて、腰を抜かすかもと思いました。^^  
長々、失礼いたしました。
Posted by calicia at 2008年03月10日 21:29
 こんばんは。
 コメント、ありがとうございます。
 コメントいただいて、さらにいろいろと考えが拡がりました。

 特に、
 >そもそも、「しっくりしないこと」への許容度って、
その文章が作られた背景・目的によっても変わるのではないか?と思いました。
例として、2つの方向性が考えられます。
・「第一言語が日本語である人たち」がドイツ語を学習するための教材 なのか
・「第一言語がドイツ語である人たち」で、かつ「日本の民話に興味を持つ人たち」のための教材 なのか<
という指摘には、大いに刺激を受けました。

 そうなんですよね。
 『因幡の白うさぎ』がドイツ語で語られていることのちぐはぐさに加え、何ゆえ、「第一言語が日本語である人たち」のドイツ語の学習の教材にこれが選ばれているのか?
 そこにもまた、しっくりとこない訳です。
(番組は前者だったのです、明らかに)

 しっくりとこないことの意味。
 「内的」にも「外的」にも、折に触れて考えていこうと思います。

 >『因幡の白うさぎ』が収められている『古事記』も「変体漢文」で書かれているので…
 ああ、確かに。
 どう感じるんでしょうね。
 想像すると、とても興味深いです。
Posted by figaro at 2008年03月10日 22:24
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