2008年01月17日

一筋縄ではいかないピカレスク『しとやかな獣』

 京都みなみ会館まで、川島雄三レトロスペクティヴ中の一本『しとやかな獣』(1962年、大映東京)を観に行って来た。

 『しとやかな獣』は、新藤兼人の原作・脚本を川島雄三が映画化した作品だが、これが滅法面白い。
 とある団地の一室、元海軍軍人の父(伊藤雄之助)と母(山岡久乃)、娘(浜田ゆう子。土曜ワイド劇場的なセミヌード入浴シーンがある)、息子(川畑愛光。力み過ぎ)の四人の家族を中心に、彼彼女らと関わる個性全開の人々の欲の皮のつっぱらかっただまし合い、虚々実々の駆け引きが、速いテンポでこれでもかこれでもかという具合に描かれていて、全編、全く飽きることがないのだ。
 いんちきいつわり嘘ペテン。
 まさにこの日本という国の戦後の有り様(そして、それは、「今現在」の日本の姿でもある)が克明に、適確に浮き彫りにされているが、一方で、登場人物をただただ「狡い」「醜い」と一刀両断に切り捨てている訳ではないことは、新藤兼人の脚本や川島監督の作劇をみれば明らかなことで、そここそが、この『しとやかな獣』を、単純なピカレスクや諷刺喜劇に終わらせない要因になっていると思う。
(川島雄三が『幕末太陽伝』を撮っていることもあってか、作品の構造が、落語の『掛取(万歳)』っぽく感じられたことを付記しておきたい)

 役者陣では、おかしさとかなしさを体現した伊藤雄之助と山岡久乃の夫婦も見事だが、若尾文子の「変身ぶり」も魅力的だ。
 また、高松英郎と船越英二(船越さん、いいなあ)が柄に合った演技を行っている他、いい意味で抑制がきいた山茶花究、コメディリリーフ(てか、息抜き)的なミヤコ蝶々、そして「やってるやってる」小沢昭一も出演していて、誠に嬉しいかぎり。

 フィルムの悪さはいかんともし難いが、団地の部屋を外側から「牢獄」のように映すといった映像的な実験作品として観るもよし、アメリカに従属しつつ高度経済成長を推し進める日本の現状を批判した社会派作品として観るもよし(明らかに、船越英二と伊藤雄之助の有り様は「対比」されているはずだ)、ただただ笑える喜劇として観るもよし。
 邦画好きなら、絶対におとせない一本。
 必見だ!


 それにしても、市川崑や増村保造の作品にもそう感じるが、大映東京の作品の先駆性(並びに邪劇性)って、やっぱり凄いや!!
posted by figarok492na at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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