2007年10月11日

朧夜の女

 京都文化博物館まで、五所平之助監督の『朧夜の女』(1936年、松竹大船)を観に行って来た。

 一言で言えば、「妊娠小説」(斎藤美奈子:『妊娠小説』<ちくま文庫>参照)ならぬ、「妊娠映画」だろうか。

 法学部の学生(徳大寺伸)がひょんなことから水商売の女(飯塚敏子)とわりない仲になり、女は子供を身ごもってしまう。
 で、学生の母(飯田蝶子)の心情を慮った伯父(坂本武)が子供の父親は自分であると、自分の妻(吉川満子)にさえ嘘をつく。
 しかし、女は…。

 という風な、まさしく松竹大船調の人情話で、全巻110分のうち、長さを感じた部分が全くなかったと言えば嘘になるけれど、各々の登場人物の人物造形が丁寧であることや(例えば、坂本武演じる伯父のお人好しぶり、飯田蝶子演じる母親のわが子かわいさぶり等々)、淡々としていながら冗長とは言えないストーリー展開(女が自分の部屋に学生を誘うところなど、とても印象的だ)、さらには上記の役者陣のアンサンブルのよさが合わさって、一見の価値ある作品に仕上がっているのではないか。

 また、「下町の雰囲気」の表現にはだいぶんデフォルメがありそうなものの、当時の風俗を識るという意味でも恰好な一本だとも思う。

 役者では、河村黎吉や佐分利信、岡村文子、谷麗光、若き日の笠智衆(一瞬アップになる)が出演している他、冒頭に一竜斎貞丈も顔を出している。


 余談だけれど、五所さんでは、できれば戦後に新東宝がらみで撮影した一連の作品も観てみたいな。
posted by figarok492na at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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