2007年09月28日

無法松の一生

 京都文化博物館まで、阪東妻三郎主演、稲垣浩監督の『無法松の一生』(1943年、大映京都)を観に行って来た。

 『無法松の一生』は、岩下俊作の『富島松五郎伝』をもとに伊丹万作が脚本化し、さらにそれを稲垣浩が映画化した作品である。
(解説によると、伊丹万作は『いい奴』という題名で脚本を執筆したそうだが、語感から言っても、『無法松の一生』というタイトルのほうがしっくりとくる)

 戦中戦後の検閲*1によって相当カットがあるためもあってか、物語的にどうしても「あれあれあれ」と感じてしまう部分もないとは言えないのだけれど、バンツマ演じる松五郎が山車の上で太鼓を打ち鳴らすシーンには、やはり心を動かされたし、戦意高揚とは無縁の作品世界には、どうして戦時中にこの『無法松の一生』が人気を集めたのかもわかったような気がした。
 また、宮川一夫の撮影技巧の高さも特筆に値すると思う。

 役者陣では、当然松五郎その人としか思えない阪東妻三郎を挙げるべきだろう。
 流石はバンツマと唸る他ない。
(その表情から、時折、田村高広ばかりか、田村正和や田村亮のことまで思い起こしてしまった。そして、どうして田村正和が自分の「フォルム」にあんなにこだわるのかも理解ができた)

 一方、松五郎の思慕の対象である未亡人役の園井恵子の清楚な美しさも強く印象に残る。
 惜しくも、彼女は広島への原爆投下によって命を奪われてしまった*2。

 他に、沢村アキオ名で長門裕之が出演している他、月形龍之助、永田靖、杉狂児、山口勇(後述、小林信彦の親類)、香川良介、戸上城太郎、荒木忍、宗春太郎らが出演している。

 邦画好きなら一度は観ておくべき作品だろう。


 *1 戦時中の検閲に関しては、小林信彦の『一少年の観た<聖戦>』<ちくま文庫>中の、『「無法松の一生」の皮肉な運命』が詳しい。
 戦時中のこの作品のカットが、単純に「検閲によるもの」と断言できない事情が記されている。

 *2 園井恵子の被爆死に関しては、新藤兼人監督の『さくら隊散る』が詳しい。
 この作品で、未来貴子が園井恵子を演じているが、確かに雰囲気的にぴったりのキャスティングだと思う。
posted by figarok492na at 17:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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